AIJ事件で、警視庁は浅川和彦被告ら3人を詐欺容疑で再逮捕したそうです。
ほかに再逮捕されたのは取締役の高橋成子被告でした。ここまでで被害額は約200億円に達しました。
これまで報道されていることは、AIJ投資顧問が1000億円を超える企業年金の資金を失わせた事件で、AIJは、巨額の損失を隠す一方、報酬や手数料として100億円前後を得ていたことが関係者への取材で分かっています。
ここで被害者にあたるのは土建業や印刷業界基金でした。そのほかに大手電機メーカー、某大学、有名IT企業なども含まれています。
基金の理事長のひとりは、被害額救済を政府に訴えています。公的年金でまかなうという要望です。
運用さえしたことがない組織が、失敗したからそのツケを政府や公的年金(厚生年金だと思われる)に救済してほしい。なんという虫のいい話でしょうか。投資して失敗したから、税金で損失をまかなってほしい、と訴えているのと変わらないでしょう。
AIJは、この社長は、プロの運用者ではないことは明らかです。野村証券の営業上がりでした。接待テクニックは相当上手で引っかかった各基金担当者も、想像するに、手厚いもてなしを大いにたのしみ満足したのではないでしょうか。
ところでAIJは、そもそも絶対利益を狙い、デリバティブで運用するとしていました。いわゆるヘッジファンドと同じやり方によるハイリスク投資です。
振り返ってみると、2008年のリーマンショックや昨年の大地震で、個人もファンドも、さらに証券会社は、何社も利益を飛ばし、市場から退場しました。
リーマンショックの世界のマーケットがジェットコースターのように乱高下した株式市場で、AIJなら安心だよね、と基金担当者は、疑念も抱かずお任せしたのでしょうか。プットの値は100倍に膨れ上がった劇場型マーケットを見て、うちの「基金はもうかっているよね」とのほほんと構えていたのでしょうか。解約した基金もあったのだから、それは投資担当者としては妥当でしょう。
しかし恐怖指数が80前後と史上最高にはね上がっても、AIJは、心配ないと、説明したから、「大丈夫だよね。利益は出ている」と解約しなかった担当者は、本当に思ったのでしょうか。
しかるべき金融のプロ集団の信託銀行も問題でした。海外の私募投信に預けるリスクの高いスキームなのに、信託銀行は注意を払っていなかったのはなぜでしょうか。ぼくたちは、やったことないからできないとでもいったのでしょうか。
老人がひっかかる投資詐欺と同じ構図か
AIJ問題で起きた損失を、国民負担にするのはおかしい。ひっかかった基金担当者は、おれおれ詐欺の被害者や老人がひっかかる投資詐欺被害者とほとんど同じレベルでしょう。
大事なお金を一任勘定でお任せしたのは、小学生以下の投資知識レベルです。さらに投資詐欺にあった老人を救わず金額が大きいだけで、税金を投入して救済する民主党政権、厚生労働省こそノー天気な被害者救済を急ぐのはどうなのでしょうか。小額事件に目をつぶり金額が大きく票田につながる今回の問題だけ、救済の姿勢を示すのは、疑念を抱きます。逆に今後、投資詐欺事件を助長するのでは、ないでしょうか。
ここでのポイント
・基金担当者のレベルは、投資詐欺にあう老人を笑えない。小学生以下の投資知識しか持ち合わせていなかった。はたして、彼らを国民負担で救わなければならないのか。
・ 海外の私募投信に預けるリスクの高いスキームなのに、信託銀行は注意を払っていなかった。信託銀行の責任は大きい。銀行側の善管注意義務違反でないか。
鈴木 和夫