投資対象としてワイナリーを考える --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

最近、ぶどう園(ワイナリー)の売買のニュースを2件ほど続けて目にしました。一つは中国の中糧集団傘下の中糧酒業が今年2月にフランス・ボルドーのワイナリー「シャトー・ヴィオー」を推定12億円程度で買収したのですが、バンクーバーの地元紙に最近フォローの記事があり、地元フランスっ子から自分達の血を売るのか、といった反発がでているようです。


もう一つはブルームバーグにプランプジャック・ワイナリーの共同出資企業がカリフォルニア、ナパバレーのスタッグズ・リープ地区で土地50エーカーを購入したとあります。更にこのような売買は年末までに総額8億ドル(約630億円)相当に達する見通しで市場がピークに達した2007年以降で最高水準になる見込みだとあります。

ぶどう園を含むちょっと珍しいタイプの不動産を英語でユニークプロパティと称します。一般的な不動産取引対象は住宅、オフィス、商業スペースなどで、これらの不動産にはたくさんの需要と供給があり、売買も比較的しやすいもの多いのですが、ぶどう園のような不動産は売買対象というより長期的にそこから収益を上げる目的で腰を据えなくてはいけないところで区別する必要があります。

実は私の知り合いがカナダ、ビクトリアの近郊でぶどう園を持っているのですが、彼はもうやめたいと思い続け、遂に昨年の生産を最後に事業を中止し、売りに出していますが、まず当面は売れないと思います。なぜなら彼が私に「この場所では十分な太陽がないからうまいワインは作れない」と呟いたのです。良質なワインが作れなければそんなぶどう園を買う人はいないわけで、まるで自己否定しているようでした。

ユニークプロパティはそこから収益が上げられる自信があればそれは面白いチャンスになることも事実です。例えば私が所有するマリーナもユニークプロパティに入りますが、マリーナの売買のニュースが私のところに比較的良く耳に入ってくるのは私がマリーナビジネスを知っているからであります。ずぶの素人がマリーナやぶどう園を突然買っても収益が上がらないように売買する相手は非常に限られているということです。

昨年、所有者の気変わりで没になったあるマリーナの買取案件も結局、周りを見ればそんな買収に名乗りを上げるところなどなく、競争相手がまったくない状態で交渉が進んでいました。

ぶどう園の話に戻りますが、ブルームバーグには「高級ワインブームの再来」というタイトルがついており、記事によるとカリフォルニアワインはアメリカで消費される20ドル以上の3分の2を占めるそうです。

そういえば昔、飲み仲間と酒談義をしていて一番金がかかるアルコールはワインではないかと話しておりました。一本でグラス5杯。一度うまいワインを飲み始めると安いワインが飲めなくなるこの世界は恐ろしいものがありますが、アメリカも景気が悪いといいながらも良いワインが飲めるというのならさほど心配する必要もないのかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年9月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。