野田政権唯一の目に見える成果は消費増税に道筋を付けた事と思っている。しかしながら、古来「孤掌鳴らし難し」と言われる様に、消費増税は歳出の大幅な削減とセットで実行せねば意味を成さない。
財務省資料を見る限り「社会保障」関連支出が突出しており、消費増税と併せ、この部分に大鉈を振るう事で今後の国債発行を出来る限り抑え込むのだと理解していた訳である。
そして、政府も国民に対し消費増税の必然性を説明するに際し、「税と社会保障の一体改革」と繰り返して来た筈である。問題は、消費増税が国会を通過したにも拘わらず、「社会保障改革」の中身と実現の為の道筋が全くと言って良い程見えない事である。
率直に言って、「税と社会保障の一体改革」と言うフレーズは、消費増税を通す為の方便であったのでは?と疑ってしまう。
次に比重の高い国債関連の歳出は調整不能である。地方交付税、交付金関連も国と地方の統治のあり方と言う根本の部分が変更されねば同様調整不能であろう。従って、その他各省庁の予算を削減するしか歳出削減の可能性は残されていないのが現実である。
かかる日本の財政状況下、この日経新聞記事が伝える、省庁概算要求の実態には正直開いた口が塞がらない。将来の消費増税に依る歳入増を当て込んでの省庁間の予算分捕り合戦としか思えないからである。
例えば、国土交通省はLED照明で84億円を要求しているが、蛍光灯からLEDへの切り替えでの節電等微々たるものである。一方、未だ使用可能な蛍光灯設備を廃棄する事での資源の浪費は甚大と推測する。税の浪費であるだけではなく、少しもエコではない訳である。
政府としての短期的な課題は蛍光灯からLEDへの転換等では決してなく、原発の再稼働である。
経産省の蓄電池開発180億円も意味不明である。こう言ったエネルギー関連の研究開発は、従来から経産省傘下のNEDOの管掌であり、本来NEDOの年次予算でやるべき業務の筈である。予算の二重取りに他ならないのではないか?
他の新聞にも、納税者の神経を逆なでするであろう記事が散見される。
先ず、朝日新聞の外務省、竹島PR費初要求 13年度予算で6億円である。何で「冊子」と「外務省ホームページ」で6億円もかかるのだろう?「桁」を間違えているとしか思えない。
外務省から大手広告代理店に仕事を丸投げし、大手代理店は下請けに、下請けは更に孫請けに丸投げするのであろう。外務省の意図は大手広告代理店の子会社である○○総研に天下り先を確保する事としか思えない。
そもそも、李明博大統領自身が語っている様に、今回の竹島上陸の背景には従軍慰安婦問題があり、この抜本解決の為には朝日新聞に依る捏造記事の問題や河野発言中身の見直しが必要である。こういう、やるべき事を棚上げして広告等打っても何の意味も無い。「税」を溝に捨てる様なものである。
時事通信の伝える、いじめ対策費など要求=7.2%増の6兆455億円―文科省も不愉快なニュースである。
文部科学省は7日、2013年度予算概算要求を発表した。一般会計と復興特別会計を合わせた要求額は前年度当初比7.2%増の6兆455億円となった。特別重点・重点要求枠は4943億円。東日本大震災を受けて、公立学校施設の耐震化などの防災対策費3022億円を盛り込んだほか、いじめ対策としてスクールカウンセラーの配置拡充などで73億円を要求した。
文科省は交通安全協会を模した学校安全協会の如き組織を新設し、恒久的な天下り先にしたいのであろう。当然の事ながら、一旦これを認可すれば恒常的に予算化される事になる。
文科省がいじめ対策の方針を立案し、地方に周知徹底するのは良い。しかしながら、対応は飽く迄現場で行うのが従来のスキームではないのか?屋上屋を重ねようとする文科省に危うさを感じる。
虐めに対し、「学校」、「教育委員会」が機能不全な訳で、今後警察が積極的に介入するのは当然である。従って、警察に追加予算が必要なのは理解出来る。この費用は、本来役立たずの、「学校」、「教育委員会」をリストラして捻出すべきものではないのか?
百歩譲って、「学校」、「教育委員会」のリストラが困難と言うのであれば地方交付税、交付金で対応するのが本来の筋と思う。
繰り返しとなるが、野田政権に依る「消費増税」が後世評価されるか否かは偏に歳出削減の達成に懸っている。
仮に、社会保障改革が遅滞し、今回各省庁が出して来た野放図な概算要求が通る様では、消費増税に依る追加歳入は結局白蟻の餌と言う事になってしまう。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役