日本から書店がなくなる日 --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

駅前には書店、というのが昔の風景でした。しかし、いまや、書店を探すのに苦労するといっても過言ではありません。事実、1988年には日本全体で28000軒以上あった書店もいまや15000軒程度で書店の減少化は加速度がかかってくるかもしれません。


書店が減った理由はいくつかあろうかと思います。

  1. 若い人の読書量が減ったこと。
  2. 大型店舗化し、客がそちらに吸収されたこと(事実、一店舗当たりの面積は約300平米と2000年ごろと比べ6割も大きくなっています)。
  3. 商店街にあるいわゆるパパスママス型の経営者がリタイアを迎え、淘汰が進んだこと。

などがあげられると思いますが、今後、この勢いを更に増幅させるのが電子図書の普及ではないかと思います。
スマホやタブレット等だけでなく、専用リーダーと称されるディバイスはソニー、シャープ、楽天をはじめアマゾンもそろそろ日本での発売が近いとされ、大競争時代を迎えようとしています。

確かに本は重いことと保管に場所をとるという弱点があります。私は海外住まいですから日本で書籍を買うにしても文庫サイズでないと数を持ち運べないという弱点があります。これが電子化されればそれらの頭痛の種からは解放されるのでしょう。

また、最近の書籍はサイクルが極めて早くなってきました。ベストセラーでなければ5年前の本を探すのは無理、という状況は往々にして生じます。私はかなりマニアックな本を求めることが時々あり書店では扱い終了といわれ、結局、中古本をネットで購入したりしているのです。

電子化されればこのあたりも解消されるのでしょう。

一方で街の書店のみならず、駅前の大規模書店は今後、確実に衰退の道を辿っていきます。もちろん、各書店、様々な工夫を凝らすでしょうし、駅前の書店がなくなるまでは10年ぐらいの時間がかかるかもしれませんが、いずれそういう時代を迎えることは覚悟しなくてはいけないのだろうと思います。

それは昔、レコード屋で時間を潰していたのがHMVのようなCDショップに変わり、いまや、それすらほとんど見かけることがなくなったのと同じです。そういえば、1、2年前、東京であるJポップのCDを買おうと思ったのですが何処で買ってよいか分からず、挙句の果てに成田空港にCDショップがあったのを思い出し、そこで購入すれば良いと思ったらそこも潰れていてなかったという経験があります。書籍もそのうち、そうなるのでしょうか?

スマホは人々の生活を変える、といわれましたが、人々の生活を変える以前に街の風景を変えるのかも知れません。そのうち、日本にはリテールと証する小売店舗はよほどの工夫をしない限りやっていけない時代が来るのでしょうか?

そういえば私どもの商業不動産部門のテナントにカナダの某大手銀行が入っておりますが、その支店長曰く、「ネットバンクのおかげでいまやお客は銀行に来る必要がなくなったのよ。だから店舗は昔のように巨大なものから街中のひっそりしたものに変わっていく」といっていたのが印象的でした。ちなみにこの銀行は200平米強のスペースでフルサービスの機能を持たせています。コンパクト化、という事でしょう。

10年後の風景はどういう風に変わっていくのでしょう。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年9月11日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。