朝日新聞が伝える所では、中国の監視船、尖閣沖の領海に侵入 駐日大使に抗議との事である。
14日午前5時ごろ、沖縄県・尖閣諸島大正島の北約44キロの日本領海外側の接続水域に、中国の海洋監視船2隻が相次いで入ったのを海上保安庁の巡視船が確認した。2隻はそのまま南下して午前6時20分ごろに領海にも侵入したが、午前8時前には領海を出た。
「中国の海洋監視船」2隻と言うのはやや紛らわしいが、漁船等とは明らかに異なり、限りなく軍艦に近いものであろう。この次は軍艦を派遣すると日本政府を脅しているのである。
ハードパワーである「軍」とコインの裏表の関係をなすものは、本来「外交」の筈である。しかしながら、日本側のカウンターパートである、丹羽前大使が軽率発言を理由に解任されてしまったり、後任の西宮大使が渋谷の道を歩いていて、事故でもないのに倒れて病院で療養中とかで、日中外交が機能不全の様子である。
罹る経緯もあり、一気に外交交渉をパスして「対日通商」で圧力を加えて来た様である。日本側に譲歩が無ければ、またぞろ戦略商品である「レアアース」等で禁輸措置を取る筋書きなのであろう。
中国政府の幹部が公式の場で不買運動を容認するのは異例。自治体や政府間の経済交流の延期にとどまらず、日本への旅行のキャンセルや日本製品の不買運動の拡大が懸念される。ネットや反日デモでは「人民元は抗日の武器」「1年日本製品を買わなければ日本経済は瓦解(がかい)する」などとして、不買の呼びかけが広がっている。 姜次官はさらに、日本による尖閣諸島の国有化が「中日経済貿易関係に負の影響を及ぼすことは避けられない」と断言した。尖閣諸島を日本政府が国有化するまでは「中日経済貿易協力の展望は開けている。双方とも長期的に大局をみる必要がある」(同省報道官)との立場だった。
さて、それでは中国の今回の企ては功を奏したのであろうか?
今回の中国側の矢継ぎ早の挑発に対し、日本政府は今の所冷静を保っている(単に反応が鈍いだけかも知れないが)。
為替(円)が暴落し(輸出企業は喜ぶかも知れない)、日本国債が値を下げ、東京株式市場でストップ安となる銘柄が続出する展開となれば中国の威光が世界に示される訳である。しかしながら、市場は至って何事もなかったかの様に平静を保っている。
それどころか、東京株式市場はQ3を素直に好感して大きく値を上げている。市場は今回の中国の挑発を一顧だにしなかったと言う事であろう。
重篤な国内問題を抱える中国政府が国民の不満をの捌け口として、「尖閣」、「抗日」を政治的に利用している事を市場に見透かされているのだと推測する。
特に、権力継承の移行期にある習近平氏に就いての「噂」と「噂」の拡散に就いては中国政府の頭痛の種である事は確実である。
私は、1990年から1995年の五年間で五十回以上中国に出張したが、中国人は根っからの噂好きで、且つ、公式の政府発表を信用していない事に驚嘆した経験がある。
日本政府としては、この市場の反応に素直に対応すべきと思う。詰まりは、尖閣に就いては従来同様不法な上陸があれば強制送還で対応し、決して話を大きくしない事が肝要と思う。
一方、対日禁輸等に就いてはWTOへの適時提訴等、関係国際機関の判断、調停を都度求めて行くべきだと思う。
中国が日本に対し攻勢を強めている様に一見見間違うが、実際苦境に立つのは中国政府ではないのか?
山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役