実は筆者はSF映画が好きで、中でもエイリアンは非常にメモリアルな作品だと考えている。
というわけで、「エイリアン0」とも言うべき本作には高い期待を抱いていた。
こういう場合、ハードルが高い分、えてして不満足感を抱いてしまうものだが、そこはさすがリドリー・スコット、良い意味で期待を裏切ってくれる水準だった。
ただし、万人におススメできる作品かというと、それは違う。
初代エイリアンは、SF、ミステリー、ホラー、アクションといった要素が絶妙なバランスで配合された映画だった。ただ、その後のエイリアンシリーズは、各監督が自らのテイストに見事に味付けしてみせつつも、基本的にはアクションの路線のみを継承したものだ。(筆者は3以外はみんな大好きだ)
どうもインタビュー等を見るに、リドリースコット的にはそこにやや不満があったようで、本作には彼が30年間腹の中で溜め続けた未消化物を一気にぶちまけた感がある。
そしてそれは、30年間腹に溜まっていた分、発酵して実にアクが強くなっていて「スターウォーズ大好き!」とか「エンディングですっきりしてナンボのもんじゃい」的な人にはなんじゃこりゃ的な感想を抱くことになるかもしれない。
そう、たまの休日に映画を見て、あー面白かった明日から仕事頑張ろう的な人ではなく、映画観終わった後にPCにかじりついて「〇〇はアンドロイドなのか否か」とか「なんであいつはあそこでボタン操作出来たのか」とかいった点でマニア同士、喧々諤々の議論をするのが大好きな人向けの映画である。
というわけで、ブレードランナーや初代エイリアンが大好きだという人、そしてマッチョマンとイカの格闘に萌える人には強くおススメしたい作品だ。
まあそういうの差っ引いても、単純に映像だけでも銭の取れる映画ではあるので、それだけでも見に行く価値はあるだろう。
諸般の事情により絶対に地上波ではやらないと思うし。
編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2012年9月19日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。