金曜日のシャープに関する一連のニュースを見ていると野田首相の党首選再選より注目せざるを得ない状況でした。以下、ブルームバーグのまとめ記事。
共同通信は20日、2014年3月期に300億円程度の連結純利益を確保する方針を金融機関に提示する方向だと報道したほか、読売新聞は21日付朝刊で海外2万人の給与削減やスマートフォンのアジア販売拡充を行うと伝えた。毎日新聞も同日付朝刊で米インテルに300億円超の出資要請をした。
また、日経では太陽光発電事業を縮小し、2004年に買収したアメリカのリカレントエナジーを売却するリストラプランを策定している模様と報じています。
特に注目されたのがインテルへの出資要請ですが、本件については事の真相は不明で日経では否定記事を掲載していますし、毎日の記事でもシャープ広報部は「知らない」と答えているとしています。
今日までのシャープのどたばた振りをみていると「ポリシーなきリストラ」としか思えないのであります。そして、実権はもはや銀行主導とみて良さそうで経営の方針をじっくり考えている余裕などほとんどない、というのがありありと見えるのです。
本命の台湾、鴻海は9.9%の出資について見直すとしたままほとんど進展がないとされています。私はこのブログで以前から鴻海はシャープ本体には興味がなく、堺工場だけが欲しかったのではないか、と指摘していました。今の株価からすれば9.9%なら僅か200億円強の資金しか手に出来ず、その後、鴻海がシャープに生命維持装置をつけてくれる確証すらないのに何故ここまで頼るのか理解に苦しんでいました。
仮に毎日新聞のスクープが100歩譲って勇み足だったとしてもシャープ経営首脳が鴻海に頼れないので他の出資者を探そうという動きをしていると想像するのは正しいでしょう。また、これは私の勝手な想像ですが、鴻海はシャープへの出資は本当のうまみがなければやらないと思います。つまり、もっと安く買い叩くチャンスをうかがっているということです。華僑マネーの意味がどういうことか、十分理解していればこういう見方もできると思います。
私は今回のシャープの激変振りに企業経営の難しさを改めて感じています。そして栄枯盛衰のサイクルが極めて短くなってきた世の中においてウォーレンバフェット氏流の普遍のビジネスとの相違を改めて感じます。新製品を次々に出し、華やかな世界に浸るのか、地味にしかし、着実に稼ぐのが良いのか、ということです。
そういう意味では日本には儲けている会社は極めて多いのです。そしてそれら多くの会社は目立たないB to B系の企業なのです。
シャープの経営再建は典型的な日本型、つまり、銀行主導で行われる気がいたします。となれば、銀行が納得する本業回帰、会社のスリム化を徹底的に行いますから残った本体は「骨皮筋右衛門」ということなのでしょうか?しかしそれではシャープの良さを殺してしまうと思います。技術系の会社において最も大事なのは技術系の社員であり、彼らに夢と希望を持たせられなければ良いアイディアは出てくることはないでしょう。
今日はこのぐらいにしておきます。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年9月22日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。