円高状況は変化するか?日銀

釣 雅雄

気にかけている人は少ないのではと思うのですが,最近,日本の長期国債金利と為替があまりEU債務危機に反応しなくなりました。(特に金利上昇方向に。)スペインの危機が安定化しても(昨日は再度国債債金利が上昇),なぜか日本国債の低金利と円高は定着しています。

また,日銀の当座預金残高が過去最高を更新、累次の緩和強化で高水準続く(ロイター,9月24日)「過去に導入した当座預金残高を目標とする「量的緩和政策」時代のピークの「30─35兆円程度」を大きく上回っている。」というニュースがありました。

これほどの金融緩和にもかかわらず,インフレにも円安にもなっていません。(過去の量的緩和政策の時には円安だった。)

この状況が経済の変わり目を意味するのか,たまたまなのかまだわからないところですが,注意も必要だと思います。


最近,日本の国債(10年)金利は低い水準で推移しています。この超低金利はEUの債務危機が要因だと思われます。図ではスペイン国債(10年),米国債(10年),日本国債(10年)の金利の動きを描きました。(日本国債の金利は比較しやすいように2倍にしています。)

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この図からわかるようにEUの債務危機にともない,資金がより安全な米国や日本,あるいはドイツなどの国債に流れてきた考えられます。実際,日銀当座預金増減要因と金融調節)との関係をみてみます。

図は日米国債の金利差米国国債金利-日本国債金利),日本国債金利(%),日銀による国債買入(含む 資産買入等基金,億円)の額を示したものです。国債買入は棒グラフになっていますが,当日と前後1日の3日間の平均値です。

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ぱっとみると,日米金利差が拡大しているときに比べて,金利差が縮小しているときに国債買入が多めになされています。

一方,国債買入があったからといって,日本の長期国債金利が低下しているわけではなさそうです。あるいは,国債金利が上昇したから国債買入を増やしているわけでもなさそうです。偶然の可能性もありますが,日銀は,矢印の頃のように日本の国債金利が上昇していても日米金利差が拡大していれば買入を抑え,金利が低くくても金利差が小さければ買入を多めに行っているようにみえます。

簡単に言うと,日銀は円安やインフレを目指すという意図をもって,タイミングを計りながら金融調整を行っているのではないかということです。これは考えてみればうまく機会を捉えています。日本単独で金利を下げるのは難しいけれども,そこにEU債務危機による低下があった。金利が底となったのをできるだけキープする一方で,他国の金利が上昇するのを利用して円安方向に持って行く。そして,中期的には物価への影響も実現していくという流れです。(再度,偶然かもしれませんが。)

金利そのものはこれ以上は低下しにくいので,物価への反映は遅れ,まずは円安になると予想されます。(といってもせいぜい80円を超える程度でしょう。)

けれども短期金利で差が出ていないためか,今のところまったく反応していません。これがなぜか,今後は円安傾向となるのかどうか。迷っているところです。

しかし,野口悠紀雄先生が指摘(『金融緩和のエンドレスゲームに突入する世界』)するように 国際的な金融緩和・為替レート減価競争がエンドレスとなり,日本でもさらに 財政規律が弛緩することになるのは危険です。短期的な視点と中期的な視点の両方を持ちながら,注視していくべきでしょう。

岡山大学経済学部・准教授
釣雅雄(つりまさお)
@tsuri_masao