地方より国のほうが上という意識はもう捨てた方がいい

大西 宏

自民党の総裁選で、地方党員の投票結果とかけ離れた結果となったことは今の政治を象徴しているようでした。地方から積み上げた民意ではないところで政治が動く現実をまざまざと見せつけたように感じます。
さて自民党とは対照的に、維新の会が国会議員と地方議員を一票の権利を同等に扱うということのようです。それと、地方の首長が党首や幹事長となることに批判が集まっていますが、すくなくとも前者に関してなぜ批判が起こるのでしょうか。理解に苦しみます。というかメディアも中央集権型で成り立っているので、地方に権力が分散することはメディアにとっても不都合なので、本能的に批判したくなるのでしょうか。


大阪維新の会いばらき支部顧問の足立さんという方がブログで、「統治機構を作り直し、国は外交・防衛、金融政策等に集中し、直接住民にかかわる行政サービス等は基礎自治体に、その間のインフラ整備や産業労働政策を道州が担当するとすれば、それぞれを担当する議員団がピラミッドになっていることの方が異様であり、横並びで連携・調整するのが当然」というのが正論だと感じます。
日本維新の会が直面する2つの挑戦 ―小選挙区/地方分権時代の政党づくり―(足立やすし) –

まだまだ地方分権に関してなかなか想像ができないという人がきっと多いのでしょうが、すくなくともメディアに登場する識者と言われる人や政治家の人たちにはそれぐらいの想像力は持ってもらいたいものです。

橋下市長が「大阪都構想、3年前にメディアはどう論じていたか。どこの新聞、テレビ、有識者もコメンテイターもバカばっかり。たかだか3年後のことを予測できない連中が、30年後、40年後の日本なんか語る資格なし!」と発言し、また物議を醸していたようですが、ほんとうについ最近まで、メディアも自民党の地方議員も、大阪都構想は机上の空論で、具体性にかけると批判していたのも事実です。想像力や構想力を働かせることを放棄しているとしか感じられません。

すこし真面目に考えれば、関西圏が国家レベルの経済の規模を持ちながら、独自のポジションをつくりだせず、衰退の一途をたどり、世界の他の都市圏に大きく遅れをとってきてしまったの原因は、中央集権体制でがんじがらめとなり、また府と市の長年の確執で経済や政治また情報の核となる中心機能を育てることができなかったたことが大きいということはわかったはずでした。しかもどうすれば都市として成長できるかの対案がないのですから議論にすらならず、挙げ句の果てはナチズムとまで言って批判したのですから、常軌を逸しています。

地方の首長が党首や幹事長となることについても、実際に地方分権を政治の中心課題にしてその流れをつくってきたのは大阪維新の会なので、まったく不自然ではありません。既成政党は、地方分権に反対はしませんが、やる気は微塵だにありません。地方分権が日本の経済や社会を活性化させる究極の改革だとわかっているはずにもかかわらず、民主党の代表選でも、自民党の総裁選でも誰も本気で課題にはあげませんでした。

日本が明治の時代に築き、維持してきた中央集権制度を変えることについては、中央集権による利権が失われる側からは、すさまじい抵抗が起こってくることをわかっているからでしょう。だから「政治主導」だとお茶を濁すのです。

中央集権体制というのは、発展途上国には都合のいい統治形態です。育てるべき産業が明確で、その産業に政策的な特典を与え、また資本を集中させれば、産業が育ってきます。
経済の成長を国家が主導して生み出せたからです。

しかし先進国となると、そうはいきません。なにが産業として育ってくるかは、どのようなイノベーションが起こってくるかに移ってきます。イノベーションに官製はありえないのです。それは人が生み出します。あるいは人と人のネットワークが生み出します。それは、人材、技術の集積度の高さが決め手になってきますが、なにで集積させるのかは都市の個性で変わってきます。総合主義の東京一極主義では通用しません。

安全保障の問題も、もっと日本が自ら考える時代になってきますが、一極集中ということほど危ない国家はありません。戦争をいくつも経験してきたヨーロッパが各都市に機能を分散せているのも安全保障上合理的だからです。石破幹事長も防衛に強いというのなら、そんな根本問題を取り上げるべきでしょう。

さらに、高齢化が進むと、地方の大都市が地域を支える機能を持たないと、やっていけなくなります。そのためには各地方の都市が自立した経済力や統治の能力を持たないと社会も成り立たなくなってしまいます。

首都圏に地方がぶら下がり、依存するというのは成り立たなくなってきます。大胆な政治決断も、日本一律だとリスクが高いのですが、二重三重の多様性を持たせれば、政策決定のリスクも減少します。

いいだせばキリないのですが、問題は誰が中央集権から地方分権に本気で取り組むのかです。国への依存度の高い地方にはその動機がなかなか生まれません。その点で、今回の自民党執行部の山口、鳥取、島根の中国地方連合軍の人事ではちょっと期待薄のように感じますが、いかがでしょうか。

さて大阪維新の会が、日本維新の会として国政に出ることで、さらに維新の会へのバッシングは増えてくるものと思います。権力への脅威とみなされると、なにが起こるかわからないのが日本です。もっと、ひと暴れ、ふた暴れしてくれないと、地方分権への流れはまたお題目だけになってしまうだけに、挑発に乗って焦点をぼかすkとだけは避けてもらいたいものです。まだ二大政党の一翼となる力はないと思うので、地方分権しか主張しない政党であってもいいのではないかと感じます。