きのうソフトバンクはイーモバイルを買収し、100%子会社にすると発表した。これによってSBMは「プラチナバンド」と呼ばれる700/900MHz帯で、2スロットの免許をもつことになった。これは日本の電波法では違法ではないが、欧米では一つの免許を返却するのが普通だ。
たとえば2000年にボーダフォンがマンネンスマンを買収したとき、EU委員会はマンネスマンの子会社オレンジがイギリスでもっていた免許を返却するよう命じた。ボーダフォンは免許を返却し、オレンジの免許はフランステレコムに売却された。このときフランステレコムは、オレンジのベルギー現地法人を売却した。ベルギーにはフランステレコムの現地法人があったからだ。
山田肇氏も指摘するように、もしSBMが今年6月以前にイーアクセスの買収を発表していたら、電波部は700MHz帯を3社ではなく2社に分割して割り当てただろう。これだとドコモとKDDIの周波数は15MHz×2スロットとなったはずが、イーアクセスを含む3社に割り当てたため、10MHz×3になった。これをSBMがもつと、同社はすでに900MHz帯で15MHz(当初は5MHz)の周波数をもっているので、SBMだけが25MHzで他の2社が10MHzと2倍以上の差がつく。
これは孫正義氏がいつも訴えている「公正競争」に反する。10MHzずつの割り当てではLTEのパフォーマンスが十分出ない上、国際周波数と合わず、日本の携帯がまた「ガラパゴス化」するおそれが強い。700/900MHzの再編については、いったんガラパゴス周波数に決まったのを孫氏がくつがえしたが、その後の周波数オークションをめぐる議論では、彼は「公正競争」を封印してロビー活動を行ない、900MHz帯を美人投票で獲得した。
私を含む多くの専門家が「700/900MHz帯はオークションで割り当てるべきだ」と提言し、政策仕分けでもオークションをやるべきという結論が出たのに、総務省はこれを無視して美人投票を強行した。このときオークションをやっていれば、今回のように2スロット取ることはできなかったはずだ。これが裁量行政の弊害である。
今回の買収によって、電波監理審議会の答申の前提条件は変わった。電監審は割り当てについての審議をやり直し、700MHz帯のイーモバイルへの割り当てを取り消し、15MHzずつに割り当て直すべきだ。