29日、日経新聞夕刊のウォール街ラウンドアップ。タイトルは「充満する不機嫌の代償」。内容は世界のあちらこちらで国民が不満を溜め、それを爆発させているがそれがいつ我々の身にも降りかかるか分からないから気をつけよう、という事でしょうか? 中国、スペイン、ギリシャのみならず、アメリカのフットボールの審判判定にも不満が爆発していることを取り上げ、景気変調が世界的規模で起きていることを改めて感じさせています。
同じ夕刊にはオバマ大統領が中国企業によるオレゴン州の風力発電施設計画事業の買収について大統領令で拒否したとあります。この大統領令が実に1990年以来22年振りの発動であることにどういう意味があるのか、深読みをしたくなります。記事には米国の安全保障を脅かす、ということと記載されていますが、実際には中国への強硬姿勢とも見られなくありません。というのは、中国の対日行動はいまや世界の最大注目の一つであり、日本と同盟関係にある米国としては日本を何らかの形で援護する必要は大いにあるのです。
少し前の日経ビジネスの記事にも、ある興味深いことが記載されています。1997年のアジア危機の際の韓国問題。その際、韓国はまず、アメリカに支援を求めたものの当時のアメリカと韓国の険悪な関係からアメリカは拒絶。韓国は仕方なく日本にその支援を求めますが、アメリカがそれを阻止、日本も韓国への支援を断った結果、韓国はIMFによる支援を余儀なくされ、結果として厳しい経済再生プログラムを強いられ、多数の倒産企業を招いた、とあります。
つまり、アメリカを怒らせればろくな事はない、ということを改めて感じさせる内容であります。
そのアメリカでさえ、これから不満を相当溜め込むことは容易に察することが出来ます。大統領選挙は国家繁栄というより選挙のための政策を打ち出し、票固めのために手厚くするものにはより厚く、厳しくするものにはより厳しくする姿勢を見せています。更には年末には「財政の崖」が待ち構え、国民生活は目処が立ちにくい状況となり、結果としてコンサバティブな消費活動に陥ることになります。
これらの行動はある意味、グローバリゼーションの退化を生む可能性があります。例えば、アメリカでは中国で生産しなくてもアメリカ国内製でも製造コストの競争力が生まれつつあり、結果として製造業の国内回帰が徐々に進んでいくと見られています。
日本は中国からの撤退、減産、あるいはプラス1と称する代替プランへのシフトが進む可能性があり、結果として中国では外資の流出が生じる可能性が高いのではないでしょうか。
スペイン、ギリシャでは厳しい緊縮財政でグローバリゼーションからは取り残されるかもしれません。世界の株式市場もアメリカなどでは確かに高値圏にありますが、それはQE3などを通じた緩々の金融政策の結果であり、業績見合いかどうか改めて検証する必要はあるでしょう。
TPPについても各国の折り合いがなかなかつかず、その進捗には遅延が見られます。結果として日本の交渉参加表明が遅れているもののまだどうにかなる、という奇妙な状態になってきました。ひょっとするとTPPそのものは世界景気の行方の不透明感から案外、難産となる気がしております。
こうみると今年の冬は我慢を強いられる事になるのでしょうか? 秋の夜長にそんな事もふと考えたくなります。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年10月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。