高橋洋一氏は、ネットではとりわけ人気のある論客だが、池田信夫氏も指摘しているように、例えば、直近のこの記事の結論は間違っている。
池田氏は、面倒だからか、全く意味がわからない、と高橋氏の言説を切って捨てているが、そんなことはない。
とてもわかりやすいが間違っている。だから、わかりやすさにつられて誤って信じてしまう人が多いのだ。多忙な政治家やネットユーザーは瞬間的な理解を身上としているから、信奉者が、これらの層で多いのだろう。
だから、ここでは、高橋氏の単純な誤りを一点指摘する。
彼のほとんどの金融のロジックはここにつきている。
素朴な貨幣数量説だ。
彼のリフレ論や為替論の全ては、円の量を増やせば、円の相対的価値が下がるので、円安になりインフレになり、その結果、輸出が伸び、景気が良くなるという議論だ。
ポイントは、円の量を増やせば、インフレになり、円安になるというところであり、それが間違っているだけで、あとは割と理路整然としている。
財務省が介入しても円は増えないが、日銀が円を増やして介入すれば、円安になる、と言った具合だ。
そして、彼が、素朴な貨幣数量説のデータ的な根拠としてあげているのが、ソロスチャート、あるいは修正ソロスチャートだ。
このチャートは相場師の間では有名で(外資系エコノミストで好きな人もいるが、つまり彼らは要は相場師なのだ)、多くの場合は、日米の貨幣量を比較して、米国が相対的に増えた場合にはドル安円高になるという主張だ。修正版は、日本の量的緩和、米国の量的緩和の時に、この相関関係が崩れているので、量的緩和の影響を除くために、中央銀行当座預金を除いたベースで比較して、相関関係があるとしている。
見かけ上の相関があるのは事実なのだが、重要なのは、なぜ相関が見られるかだ。
相関関係と因果関係は別物というのが学校の授業では基本的なポイントとして教えるが、ここでもそうで、因果関係は別のところにある。
それは、現金などが多く発行されるのは、金利の低いときであり、現金等の比率の変化は、金利差の変化に対応しているためで、因果関係は、金利が低くなった通貨は弱くなるということである。
つまり、米国金利の方が日本の金利よりも高いことが多かったが、この金利差が縮まると、米国債券への投資が縮小し、ドル安となる、という因果関係が、現金等の数量差と為替の相関関係の背後にはあるということである。
これはいまさら言うまでもないことであるが、休日の暇つぶしには丁度良いのではないか。