iPhone5を製造しているフォックスコンの工場で再びストライキが発生したというニュースが飛び込んできました。2週間ほど前にも別の工場であったばかりでただでさえ逼迫している製造に影響が出るかもしれません。
それより、フォックスコンとアップルは戦略の建て直しを余儀なくさせられることになるでしょう。もともとフォックスコンは台湾 鴻海の中国子会社であり、同社の原動力でもあるわけですが、それは安い人件費を駆使したビジネスモデルであったといえます。私が「あった」と過去形を使うのはもはやこの期待で中国に進出しては間違いをおかすであろうし、中国は今、微妙なときにある、という事であります。
もともとフォックスコンでは厳しい労働条件ゆえに相次ぐ自殺者がでて一時、問題になりました。最近でもそれが起き、トラブル発生の元となっています。その不満は長い労働時間、そして、アメとムチならぬノルマとペナルティで労働者の強い不満を頭から抑えるという経営スタイルが引き起こした結果であるのでしょう。
グローバリゼーションは一国の優位性が絶対ではないことにもつながります。発注者や顧客が満足できないのであれば代替手段が複数存在する時代ですから発注者は簡単にその方針を変更することが出来るのです。また、時代の流れが早くなり、技術革新は日進月歩である為、企業側は最大限の効率と利潤を求め地球規模で検索を行います。
考えてみれば我々一般庶民にも同じことは言えます。インターネットで買い物をする際、あるいは、ホテルや旅行の予約をする際、比較サイトなどで最も安いところを選ぶというのは当たり前になっています。これが企業行動にも表れているわけでその基準は価格、品質、納期、安定性などが上げられるのでしょう。
もちろんアップルが直ちにフォックスコン中国工場を通じた発注を止めるとは思えません。そんな代替は利かないからです。しかしながら、中長期的には必ず、そのオプションを取るようになる、というのがごく常識的な企業行動だということです。
既に中国に進出する日本企業には大きな痛手とイメージダウンという結果をもたらしましたが、これが他の外資系企業にも影響を及ぼし始めたらならば中国の経済には厳しい影響が出ることは避けられないでしょう。
以前にも書きましたが、アメリカでは国内回帰の動きが出ています。それはアメリカでの人件費が下がっていることやリスク管理しやすいということかと思います。更にはもともと愛国心が強い国民性ですのでこのトレンドが出始めたということは中期的にそれがうねりになる可能性は高いかもしれません。
中国は今後、国家成長の踊り場を迎えます。国家成長とは輸出や不動産といった産業だけではなく、国民の成長、人材の教育、育成といった時間がかかる分野が前面に出てくることになります。これはジェネレーション単位の時を要するものであり、国家運営は新しい共産党幹部の手腕次第という事になるかもしれません。
いづれにせよ、私は中国がしばらくは中程度の成長が続き、その間に国内の改革を推し進めることが次の飛躍につながることではないかと感じております。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年10月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。