日本で開催されているIMFの年次総会。早速の世界経済成長率の下方修正という厳しい発表は経済が興味が薄い人にも「なんとなくこれから先、大変そう」という印象をもたれたのではないかと思います。
日経ではそれを「負の連鎖」と称し、先進国の不振が新興国の輸出不足を生み、更に先進国にボディブローのように打撃を加える形としています。事実、主要国の今年度、来年度の成長率見通しはアメリカの今年度分を除きほとんど下方修正。世界の実質成長率見通しについては2012年に3.3%、13年に3.6%とし、前回予測から数ポイント下がっています。
いわゆるBRICs等の新興国の不振はやはり、先進国向け輸出が低迷したことが大きかったと見るのが妥当です。中国は輸出依存度の高かった欧州でその金融危機のあおりで非常に苦しくなっています。アメリカ発の激震だったリーマンショックの時は中国が内需主導の対策を直ちに打ち出し、それまでの中国景気のよさも手伝って不動産を中心に忍耐の経済だったと思います。
が、ここに来て対日問題が噴出し、iPhoneの工場でも厳しいストライキが多発している理由は2009年の経済対策が効果を完全になくし、その後、決め手となる対策が打ち出せず、残された国民の不満が鬱積したとみるのがナチュラルでしょう。
中国は不動産バブルといわれ続けいつそれが破裂してもおかしくないと言われながらもここまできました。力ずくの政策のように見えるのは私だけでしょうか? それはいつかは外部環境が良くなるという淡い期待もあったのだろうと思いますが、ここから先は回復があったとしても緩慢なものにならざるを得ません。
ところで経済発展は貿易などの外需主導か建設や消費などの内需主導かという話をよく耳にします。数字だけを見れば内需のはずです。GDPに占める輸出の部分は日本が高度成長期を遂げていた頃でさえそんなに高かったわけではないのです。
では何故、輸出が国内景気を良くしている様にみえるのでしょうか? 私は内需というのは案外ステディな需要であり、爆発もせず、崩壊もしないものであると思っています。外部環境の変化がない限り、人々の生活は変わらず、食べるものは同じで住むところも激変しません。
ところが輸出などにより国内に好景気の風が吹くと企業活動が活発になり、それに伴い、雇用も増え、賃金も増え、不動産は上昇し、結果として消費が向上するという「風が吹けば桶屋が儲かる」とまでは言わないまでもあたかも栄養ドリンクを飲んだごとく内需が活発化すると考えてみたらどうでしょうか?
それゆえに中国にしろ、ブラジルにしろ、ロシアにしろインドにしろ外需の勢いを失い、揃いも揃って厳しい下方修正を余儀なくさせられているとしたらすっきりします。
とすれば、世界景気の回復のキーは欧州とアメリカによるところが大きいのは間違いないでしょう。アメリカはやや元気を取り戻しつつあるとみられています。シアトルのダウンタウンも人でごったがえしていましたし、クリスマス商戦の企業ベースの出足は悪くないと聞いています。
欧州の回復はドイツ次第です。しかし、ドイツは欧州統合という野望をちらちら見せていることもあり、1000年の歴史があるドイツ帝国を再構築することできわめて強い体制を敷くということも可能性の一つとして頭に描いたほうが良いかもしれません。
いづれにせよ、これから半年から一年弱は相当厳しいと思います。その間、いくつかあるハードルを人間の英知がどう乗り越えるか、これにかかってくるでしょう。
今日はこのぐらいにしておきます。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年10月10日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。