Zyngaの失速と日本撤退にみる、スタートアップで働くということ。

史上最速の成長企業とさえ謳われた米国Zyngaが失速しています。重要幹部が次々と辞任し、株価は低調、売上・利益ともに落ち込み始めています。

ZyngaはFacebookという巨大なプラットフォームの上に生息するソーシャルゲーム企業です。Facebook自体がPCからモバイルに急速に移行するインターネットのパワーシフトに乗り遅れそうになり、同じく株価低迷に見舞われていましたが、10億人のユーザー中6億人がモバイルでアクセスしているというトラフィックエンジンそのものは健在であり、より快適な利用環境(モバイルアプリの充実など)とそのトラフィックを換金するマネタイズエンジン、つまり広告やECなどの事業をモバイルでも展開するという課題について、ようやくキャッチアップし始めています。

それに対して、Zyngaはスマートフォンを主体とする新たなモバイルプラットフォーム上にフィットしたゲームをリリースすることができておらず、現在の低迷を招き、そして抜けきれずにいるのです。


Zyngaがかつての輝きを取り戻すことができるかどうかはまだ分かりませんが、Zyngaが大幅なリストラの発表をしており、その中に日本の拠点の閉鎖も入っていることに胸が痛みます。Zyngaの日本拠点は、国内のソーシャルゲーム企業ウノウを彼らが買収することで設立された、つまり母体そのものは日本のベンチャーでした。今回の決定で社員は基本解雇となるようです。まあ、エンジニアたちは現在のようなソーシャルゲーム市場が急成長している状況にあれば、すぐにでも転職先を見つけられることでしょうから、あまり心配は要らないのでしょうが、それにしても急な失職は気分的には良いものではないでしょう。

もちろんスタートアップはUp or Out、つまり急成長するか消えてなくなるかのどちらかですから、海外ベンチャーの子会社であるかどうかは本質的には関係ありません。とはいえ、史上まれに見る成功といえるIPOを果たした著名ベンチャーの一員になった誇り高い気分が、わずかな期間にずたずたにされるとは、皆思っていなかったことでしょう。

スタートアップは、急成長をDNAに刻み込まれたベンチャーです。資本調達と引き換えに
IPOもしくはM&Aなどの出口戦略の実現を義務づけられます。だからスタートアップに入社するたいていのメンバーは、そのUp or Outに対する備えと言うか覚悟は持っていると思います。しかし、Zyngaのようにいったんはあり得ないほどの成功を遂げたあとでやってきたタービュランスに対して、耐性を持つのは結構難しい、と思います。

日本のソーシャルゲーム市場はコンプガチャ問題の混乱によって若干の失速を余儀なくされたものの、来年以降の再成長を十分に見込まれています。ガラケー→スマートフォンのプラットフォームの変化に対しても、どうやら乗り越えられそうな見込です。しかしZyngaの場合はPC→モバイルという、より触れ幅の大きな変化に対応しなければなりません。ガラケー→スマートフォンは例えれば200M走から100M走の競技変更ですが、PC→モバイルはマラソン→100M走のようなものです。困難さは比べようもないものがあります。

Zyngaを仮想敵あるいは目標として海外進出を狙っているソーシャルゲームベンチャーは多いと思いますが、かつてGMやフォードを追いかけたトヨタやホンダのような世界的企業への道は開かれているでしょうか。注目していきましょう。

小川浩@ogawakazuhiro