そりゃないぜ天声人語

山田 肇

スーパーマンの転職を話題にした10月26日の天声人語が変だ、と教えてもらった。改めて読んだが、確かに変だ。▼新聞記者が主役のスーパーマンが、「新聞はもはや、ジャーナリズムではなく娯楽になり下がった」と息巻いて職を辞した。退社後はインターネットでの発信に挑む。それが「無謀と映るし、ひがみ半分、いわば副業だけに気楽なもんだとも思う」と、天声人語はいう。▼天声人語はこれからも「新聞という地味な人助けにこだわりたい」そうだが、「娯楽になり下がった」との認識はないようだ。▼10月17日の天声人語は、iPS細胞の森口氏を「はた迷惑な一人芝居」と断じ、その上で「旬のスクープに弱いメディアの習性を戒めたい」としている。しかし、一人芝居をする人間は世の中に数知れない。情報を取捨選択し、記事の信頼を上げて、はじめて新聞はネット時代に生き残れる。それができないなら、新聞はすでに娯楽だ。▼僕は、新しいことを聞かせるだけから、調査報道を主体にした新聞に移って欲しいと願っている。速報性だけなら、それこそネット情報で十分だからだ。▼ところが、調査記事を掲載する時間的余裕があるはずの週刊朝日は「ハシシタ」問題を起こした。しかし、天声人語に「ハシシタ」に関する記事はない。頬かむりだ。「そりゃないぜクラーク」と天声人語はいうが、僕は「そりゃないぜ天声人語」と言いたい。

山田肇 -東洋大学経済学部-