倫理憲章の上手なすり抜け方 日本生命のケース

常見 陽平

10月も終わりだ。あと1ヶ月で今年も就活がやってくる。12月1日からは2014年度の新卒採用の広報活動が始まる。昨年度から経団連の倫理憲章が変わり、12月からのスタートとなった。ただ、2013年度もそうだったが、昔も今もルールを上手くすり抜けようとする企業が存在する。

その中でも、日本生命の採用活動は実に絶妙だったのでご紹介しよう。


日本生命は昨年度から、採用目的のFacebookページを設置している。

URLはこちらだ。http://www.facebook.com/nissaysaiyo

内容は日本生命に関するPRが中心だ。別に採用に直結するようなものではない。とはいえ、学生に早期からアプローチしたいという下心が見え隠れする。リクナビ、マイナビなどの就職ナビが正式オープンする前から採用広報活動に近い行為を行なっているというわけだ。

さらに絶妙なのが、このFacebookページで告知されている「内定者主催のセミナー」である。名大、九大、東工大などを会場としたセミナーが告知されている。東工大のセミナーなどは、東工大の学部3年生と修士1年を対象としたものであり、明らかに就活に関係ある臭いを漂わせている。

Facebookページに内定者主催セミナー。「これは採用活動ではありません」と言い逃れのできる余地を残した絶妙な施策である。いかにもレバ刺にしか見えない肉を「上レバ焼き」として出す焼肉屋、エロい看板を出しているが「当店は風俗店ではありません」と言うマッサージ店のようなものではないか。

別に私は日本生命を批判しているわけではない。

守れない約束、ちゃんと守ったものが損をする倫理憲章などやめてしまえと考えてしまうのだ。

もう何度も書いてきたことだが、倫理憲章には罰則規定がない。解釈も各企業に任されている。甲子園の選手宣誓のようなものだ。「正々堂々と戦うことを近います」と毎回宣言する甲子園も実際には、暴力沙汰や喫煙、デッドボールや敬遠があったり、女子マネジャーにドラッカーを読むことを強要するなど実に腐敗したものになっている(最後のはネタなので、流すこと)。同様に正々堂々と戦う企業がバカを見ることになるわけだ。

就活が本格化する前に、このような事態を直視し、倫理憲章の改訂が、いや、そもそもの存在がいいことなのかどうかは議論するべきだろう。遅いスタートに戸惑い、結局、ペースに乗れず、就活迷子になった4年生が今も続けているのが現実だ。別に後ろ倒ししたからと言って劇的に勉強するようになるわけでもあるまい。

タテマエの話ではなく、本音の議論が必要だ。

この日本生命のスレスレの取り組みは、就活のあり方を私達に問いかけるのだ。