「日銀引き受け」は誤報だった

池田 信夫

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ツイッターで教えてもらったが、先週大騒ぎになった安倍総裁の「日銀引き受け」発言は、マスコミ各社の誤報だった。上の動画でわかるように、彼は17日の熊本市での講演で「買いオペ」と言っている(2分18秒前後)。私の記事でも産経の記事を根拠として「引き受け」と書いたが、これは誤りである。訂正して、安倍総裁におわびしたい。


これはマスコミ各社がいっせいに「日銀引き受け」と報じたからだ。17日の15:30に日経はこう報じている。

自民党の安倍晋三総裁は17日、熊本市内で講演し、衆院選後に政権を獲得した場合、金融緩和を強化するための日銀法改正を検討する考えを重ねて表明した。「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう。新しいマネーが強制的に市場に出ていく」と述べ、日銀が建設国債を全額引き受けるのが望ましいとの考えを表明した。

私がリンクを張った産経も15:38にほぼ同じ表現で報じ、毎日、朝日、共同、読売、NHKも17日の夜から翌朝にかけて追いかけた。おそらく日経の記事が情報源だと思われ、各社がすべて日経と同じ表現になっている。

安倍氏が「買いオペ」と言ったのを省略して、日経の記者が「建設国債を全額引き受ける」と言い換えたのは明白な誤報だ。日銀に強制的に国債を引き受けさせることは財政法で禁じられているが、買いオペ(公開市場操作)は日銀の通常業務である。安倍氏は「新しいマネーが強制的に市場に出て行く」と誤解をまねく表現をしているが、「建設国債を全額引き受ける」とは言っていない。

この報道が世界の市場に伝わり、日銀総裁が(「一般論」と断ってだが)反論するなど大騒ぎになったが、安倍氏は20日にFacebookで反論している。

私は物価目標について、「名目2~3%を目指す。私は3%が良いと思うが、そこは専門家に任せる」「建設国債の日銀の買い切りオペによる日銀の買い取りを行うことも検討」と述べている。国債は赤字国債であろうが建設国債であろうが同じ公債であるが、建設国債の範囲内で、基本的には買いオペで(今も市場から日銀の買いオペは行っているが)と述べている。直接買い取りとは言っていない。

これを共同やNHKなどは「発言修正」と報じたが、これも間違いだ。彼は最初から「買いオペ」と言ったのである。混乱の責任は、誤解をまねく発言をした安倍氏にもあるが、第一義的には発言を確認しないで日経の記事を孫引きしたマスコミ各社にある。各社は安倍氏に謝罪すべきだ。