12月4日日経の夕刊のウォール街ラウンドアップ。タイトルは「狭まるスタバ包囲網」。内容は節税対策を施すスターバックスなど大手企業に対して国民不満が高まっているというものです。例えばイギリスのスターバックスは同国内利益に対して税納付額が小さく、それがマスコミに取り上げられ大きな問題になっているというのです。
イギリス人にとってみれば企業にお金を落とし、企業がそれで儲けても、本来イギリスに落とすべきだった税額を落とさないのは泥棒だ、という発想なのかもしれません。この記事を読んである意味、軽いショックを覚えました。
私が21年前にカナダに来て取り組んだのは儲けてもないのになぜか節税対策。大手会計事務所は節税という言葉に目をキラキラさせて専門家をあっという間に集め、ああでもない、こうでもないと言いながら高い報酬を稼ぎます。節税方法は同じでも企業規模によりその報酬額は多分変わってきているはずで理由は「リスク相応の報酬」だったと思います。では与えられた節税対策はといえば大手会計事務所でもかなり突っ込んで指南する事務所からコンサバで石橋を叩きながら確実な方法を伝授する事務所などいろいろでした。
当時も今も企業は基本的には節税を考えているはずですが、このスターバックスの話が事実だとすれば少なくとも消費者相手の企業はもはや「我々はきちんと税金を払っています!」というステートメントが一番マーケティング効果があるのかもしれません。
事実、記事の中でスタバは「顧客や従業員から意見を聞いて、将来の信頼を築くために取り組むべきことがもっとあるとわかった。英国での税金への取り組みを見直している」とコメント。つまり、きちんと税金を払いますよ、というスタンスに変わったということなのでしょう。
そういえばアメリカ大統領選の候補者だった共和党ミットロムニー氏は過去所得税率が大体14%程度でアメリカ人の一般大衆よりはるかに低い税率に怒りの声が上がりました。もちろん、ロムニー氏は脱税をしているわけではなく、投資による利益ゆえに低い税率が課せられたということなのですが、10億円も所得があるのにそれはないだろうというのが結局大統領選の結果、オバマ氏が当選した伏線だったのかもしれません。ご存知の通り、オバマ氏は25万ドルを越える高所得者には減税はしない方針を強く打ち出しており、共和党との対立軸となっています。
将来的には税金を払うことは富裕層が多額の寄付金をすること以上に注目される時代が来るかもしれません。考えてみれば寄付金は税額控除が効く場合が多く結局、富裕層は多額の寄付=多額の税額控除という節税をしていることになり、よく考えれみれば「あれっ」ということなのだろうと思います。
私も個人的に寄付は少々していますが、タックスレシート分を確定申告の際に算入すると思った以上に税金が減るものなのです。
儲ける企業、高額所得の個人は今後、○○%の税金を払っているとアピールすると国民受けがよろしくなるようなそんな時代がまもなくやってくるのでしょうか。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年12月8日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。