政権交代より大事なのは、政策ブレーンの交代であり、民間、若手からの大抜擢を

高橋 亮平

衆議院総選挙も最終盤となり、選挙戦の予想も飛び交う中、選挙後の枠組みや政局に関心がある人も多いだろうし、今後の政界再編も含め国会情勢が流動的な中では、国会議員の質の向上も大きな課題と思っている人も多いのではないか。
しかし考えてもらいたいのは、政権交代とは、政権を担う顔を変えることではなく、政策転換であり、政治文化の転換であるということだ。
こうした中、政策人材やブレーンと言われる存在について、今回は、政権交代時にブレーンが大幅に入れ替わるアメリカの例を基に、日本版リボルビング・ドア(回転ドア)について提案したい。

今年、先んじて行われたアメリカの大統領選挙は、現職のオバマ大統領の勝利で終わり、政権交代の実現はなかった。アメリカでは大統領が民主党から共和党へ、共和党から民主党へと政権交代すると、政治家だけでなくそのブレーンであるスタッフも大きく入れ替わる。政権交代が起こってもブレーンを官僚組織に依存しなければならない日本とは、この部分が大きく異なる。

政権交代の大きな目的は、そのプレイヤーである政治家の顔を変えることではなく、政策の転換や政治文化の転換であることを、もう一度確認しておきたいと思う。
閉塞感の中にある社会状況の中で、国民は政治が変わることを期待し、とくに政権交代ということでこの国の未来が変わるということに大きな期待感があった。
小泉政権でも民主党政権でもまったく何もやらなかったわけではなく、個々を部分的にみれば、成果といえる部分もある。しかし、国民が期待したほどの政治変革までとはいかなかったというのが多くの人が共感する部分ではないかと思う。

今回の総選挙は、解散前後から国内の政治状況も緊張感が高まり、メディア報道は政局に注目が集まった。
自民党と民主党による二大政党制に期待の持てない国民の中には、新たな第3極になら期待が持てるのではないかと「三度目の正直」を信じる人たちがいた。
そんな中、維新の会、太陽の党、減税日本と次々に国政政党が新たに誕生し、みんなの党、国民の生活が第一なども含めた、第3極の連携などと連日メディアを賑わせてた。
結果的に12党が乱立することになり、争点は何なのかはっきりと見い出されないまま選挙は最終盤になってしまった。

こうした状況の中でも、選挙後の政界再編などという人もいるが、この国の行く末を考えた際に必要なのは、本当に国政における新たな政党の誕生なのか、それ以前に政局によるものなのかと考えなければならない。

こうした中で、考えなければならないことが2つ上げたいと思う。
1つが、どういった政権が誕生しようと、その政権を支える構造が省庁による行政組織だけであることや、その担い手が官僚たちだけである構造をどう変えていくかということ。
もう1つが、こうした政局に焦点が集まる国政の中では変革のスピードが上がってこない中で、この国の変革のスピードを上げていくために、地方からその変革の具体的なモデルを構築していくことで、実質的に社会構造を転換していくことである。

今回は、このうち前者について考えていくことにしたい。

冒頭で触れたようにアメリカには、「リボルビング・ドア(回転ドア)」と言われる政権交代時に政治家だけでなくブレーンも民間から入って入れ替わる仕組みがある。
こうした仕組みを知って、「日本もアメリカのように民間からブレーンを入れるべきだ」という人がいるが、アメリカの「リボルビング・ドア」は、単純に官僚と民間人を入れ替えればいいというものではなく、民間から「ポリティカル・アポインティ(政治任用)」として官僚組織の中で即戦力で活躍できる人材が必要になる。

アメリカでは、こうした人材は、遡って学生時代から育成されている。
その仕組みの一つに「ホワイトハウス・フェロー」と言われる仕組みがある。
大学院生や若手研究者などが、正副大統領の特別補佐官や長官の補佐官を務めるほか、大統領府や行政府などで調査をはじめとする具体的な活動を行う。
この「ホワイトハウス・フェロー」や「ホワイトハウス・インターン」制度によって若い人材が1,000人程度働きながら経験とキャリアを積む。
とくに「ホワイトハウス・フェロー」の経験者には、アマコスト元駐日大使やパウエル元国務長官など政治や行政の一線で活躍する人もいるほか、トムジョンソンCNN社長など民間で活躍する人もいる。
政権を担える政策人材をこうして若いうちから育成する仕組みがあり、また同時にこうした人材や官僚が活躍する場が、省庁だけでなく、大学などの学術機関、シンクタンク、NPOなど非営利セクターなどと数多くあることで、政権交代時に大きくブレーンを入れ替える「リボルビング・ドア」を可能にしているのだ。

これまでの日本においては、こうした人材の育成に目が向けられることはなく、行政組織の中で活躍する人材は官僚しかおらず、必然的にさらに官僚たちに依存されていく構造になる。こうした構造そのものをどう変えていくかということにもまた目を向ける必要性があるのではないかと思う。

日本の政策マーケットは、長年、官僚の独占になってきた。これは単に担い手の独占ということだけでなく、国民が政策に対する選択肢がないということも示している。
戦後復興に象徴されるように、国の進む方向を国民全体で共有する時代においては、その政策もまた中央集権により官僚が一元的に絵を描くことに論理的な大きな意味があった。
こうした構造は、右肩上がりの成長を続ける経済状況の中においても、経済成長を1つの方向に引っ張り上げていくためには、非常に効率よく機能していった。
しかし、経済の低成長や社会課題の複雑化、多様化の中で、マトリクスになった状況を解決していくためには、その担い手や手法も多様化させていく必要である。

こうした政策人材の養成と、官僚も含めた人材の流動化を行っていく仕組みの構築は、単に今回の総選挙における民間人の採用ではなく、さらに長いスパンでのこの国の未来をつくりだしていくために必要なことだと考える。
最近は少しずつ増えてきたが、民間からの採用や任期付きによる採用、さらにポリティカル・アポインティ(政治任用)を増やすことにより、国家戦略を担う人材を増やしていく必要がある。
今回、政権交代が実現することになった際は、ブレーンと言われる有識者はもちろんだが、長期的視野も加えながら、官僚からももちろんだが、民間からも若手の抜擢を期待したい。

こうしたことが政府の戦略形成の質を高めるとともに、さらに政策人材の流動化が進み独立系のシンクタンク等が増えることで、第2、第3の政策の選択肢が示され、国民は政策選択を行うことができる社会の醸成へのつながっていくのではないかと期待する。

高橋亮平
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