NHKラジオローカル番組のネット配信は是か非か

山田 肇

NHKラジオ放送をネットで全国に同時配信することについて、近畿・中京・宮城のローカル番組を追加してよいか、総務省が意見を募集している。今までは東京からの配信だけだったが、聴取者から要望があり、また同時配信の効果を検証・確認するためにも、追加を認めたいというのが総務省の考え方である。

NHKは当初から同時配信に積極的だったが、「全国あまねく無料で番組を届けているのに、それに加えてインターネットでサイマル放送しなければならないのか、という疑問がある」と民間放送連盟が反対した。このため、期間限定(2014年3月末まで)の実験として、東京からの放送だけが同時配信されていた。それを少しだけ拡大したいというのである。


一方で、民間ラジオ局は、2011年から、同時配信サービスRadiko(ラジコ)を共同で開始した。こちらには、IPアドレスで聴取可能地域を制限する機能がついている。2012年4月には、月間ユニークユーザー数が1,000万人を突破し、ラジオ離れに対する歯止めとしての役割を果たし始めている。

そもそも、ラジオなど持っていない人々のほうが多い。それらの人々に到達する手段を追求しなければ衰退するだけなので、同時配信は生き残り策として必然である。Wikipediaによると、楽天・日本ハム・ロッテの試合は放送区域外ではネット聴取できないそうだが、放送区域外にも聴取者を獲得したほうが経営上はプラスのはずだ。放送区域外の他のラジオ局から聴取者が逃げる「共食い」を恐れているのだが、楽天が聞けないから巨人を聞こうと人々は思うのだろうか。

ラジオ放送のデジタル化(V-Lowマルチメディア放送)という荒唐無稽な計画が動き出している。今さら人々に新しいラジオ受信機の購入を求めても、成功するはずもない。それよりも、ネットへの同時配信を全国に、さらには全世界に広げていくほうが、まだましだと思う。

山田 肇 -東洋大学経済学部-