「2%のインフレ」を実現する責任は内閣にある

池田 信夫

昨夜の経済財政諮問会議で、安倍首相が「2%のインフレ目標を実現しろ」と日銀に命じ、日銀も22日の金融政策決定会合で2%の目標を設定する方向だという。明日はニコ生アゴラで「安倍首相のための財政・金融入門」を放送するので、読者のみなさんからも投稿や質問をお寄せください。


これで「インフレ目標」をめぐって続いてきた無意味な論争が終わるのは結構なことだが、安倍氏は相変わらず問題を誤解しているようだ。彼がよくいうのは「2006年に日銀が量的緩和をやめたのでデフレを脱却できなかった」という話だが、これは錯覚だ。Woodfordも述べるように、量的緩和によってマネタリーベースは最大75%も増え、2006~7年に激減したが、デフレ(GDPデフレーター)は図のように変わらなかった。

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つまり(財政赤字をともなわない)狭義の量的緩和は、インフレ率に何の影響も及ぼさないのだ。その後、2010年から行なわれたリスク資産を購入する包括緩和も、上の図のように何の効果もなかった。以前の記事でも紹介したように、これはアメリカでも同じである。

したがって日銀が2%のインフレ目標を設定しても、通常の金融政策で実現することは不可能である。インフレを起こす方法は、直接カネをばらまく財政政策しかないのだ。これは先日の対談でも池尾氏と山崎氏が一致した点だが、金利上昇やハイパーインフレを引き起こすリスクがある。

いうまでもなく財政政策の責任者は麻生財務相であり、その責任を日銀に押しつけるのは筋違いだ。したがって内閣と日銀が「アコード」を結んで「2%」という数字を入れるなら、次のように責任の所在を明記すべきだ。

  • 日銀は2%の物価上昇率が実現するまで政策金利をゼロに維持する

  • 内閣は財政支出を拡大して2%の物価上昇率を実現する
  • 2%が達成できなかった場合やハイパーインフレが起こった場合は、財務相が辞任する

財政政策の効果は一度だけなので、10年ぐらい2%のインフレを維持するには、おそらく200兆円ぐらいの財政支出が必要だろう。これは「国土強靱化」にも一致し、参院選対策にもなる。自民党にとっては理想的な政策だろう。