安全保障を真剣に考えざるを得なくなったアルジェリア事件 --- 岡本 裕明

アゴラ

アルジェリアのイスラム過激派によるテロ事件は最悪の結果をもたらした可能性が強まりました。特に日揮とその関連会社の社員の方々の行方については本当に心配されるところです。

今回のイスラム過激派の行動は一部にアラブの春によって武器がテロ組織に流れたともいわれています。アラブの春の際、私は既存政権を倒すだけで次のプランがなければそれは決してよい結果を生まないと指摘していたのですが、武器の流出にまで影響が及んでいたとすれば何のための民主化運動だったのか、と疑問を呈したくなります。


もともとイスラムを含む原理派の行動は思想をとことん追求し、それを実行させるため、暴力が伴うことがしばしば生じます。日本でも赤軍や核マルなどは原理追求とされていますし、見方によっては死者が何十万人とも何百万人ともされる中国の文化大革命も一種の原理的思想の追求が暴力行為に転じたと見ることが出来ます。

原理思想がその方向性を変える時は主導者が倒れた時とか、その思想方向が間違っていると明白に認識された時などが多いのだろうと思いますが、イスラム原理主義については私は素人なりにみても今のところ何か期待できるような状況にはないどころかイスラム教のアフリカ地区を含むきわめて早い拡散は今後、このような暴力を伴う行動が再び起きる可能性が大いにあると考えています。

一方、テロと正面から戦ってきたアメリカは911直後のブッシュ政権への強い支持からオバマ政権へ移項後、明らかにそのトーンを変えてきました。一つはオバマ政権がブッシュ政権を反面教師としていること、それは国民も心理的にベトナム戦争の時と同様に疲弊したこと、軍事予算の限界、シェールガス革命によるアメリカの国内回帰現象などが影響していると思います。結果としてイギリス、フランスなどが積極的に動いておりますが、両国では世界の安全保障を確保するにはおぼつきません。

一方、国連は組織として機能が鈍っていますので今後、同様のテロが起きたとき、世界はどう対応するのか、まさに闇に包まれているという感じがいたします。これではテロ組織にとってはやりたい放題の時代がやってくるわけで日本を始め、世界各地で活動している企業にとってはまさに「企業戦士」という言葉そのものになってしまいます。

アメリカからの当面の強いバックアップが期待出来ない以上、ロシアや中国に期待するという考え方も出来ますが中国が経済的見返りなしにテロとの戦いをする体質だとは思いにくく、日本は自衛の準備も進めなくてはいけなくなるのかもしれません。安倍政権にとっては憲法改正がひとつの目標、それは国民投票の基準を緩め、集団的自衛権という流れでしょう。これは日本を二分するぐらいの大きな議論となるはずです。私自身、まだほとんど、考えている余裕がありませんでしたが多分、大多数の日本の方も同じだろうと思います。

その間に同様のテロ事件が起きたり日本を巻き込む不意の事故が起きることは大いにありえます。自衛とは何か、集団的自衛権とは何か、地球規模の平和を維持するために日本はお金だけ出せばそれでよいのか、など議論を進めていく必要が大いに出てきた気がします。

少なくともアルジェリアの事件はテロとは比較的無縁と思われていた日本を目覚めさせる衝撃的な出来事になりました。皆さんで少しずつ考えていくことが重要かと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年1月20日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。