急速充電器が3.5万台も必要か --- 松元 信嘉

アゴラ

1月11日 茂木経済産業大臣の方針として 充電スタンドを10万台にするという方針がでました。アゴラでは、山田高明氏がエネルギー問題から電気自動車を推進すべきとの投稿を続けており、興味深く拝見させていただいております。丁度山田氏も、数万台の急速充電器の設置を提案しているところですが、本当に急速充電器の普及が先に必要なのでしょうか。

まず、自分は電気自動車に乗っております。1昨年12月28日に納車され現時点で33000km走行しました。車種は、三菱ミニキャブミーブ16kw(軽バン)です。


購入の動機は、茨城県の小さな弊社では、経営農家向け特許肥料販売を行っており近隣(半径40km)の営業、納品に有効利用し、資材の仕入れ、遠くの顧客(伊豆の国市)などにも自動車で向かうため、5年前に購入したハイエーススーパーロングでは、燃料代が非常に高額になるせいです。また、5年前は販売店卸が中心でしたが、最近では直接営業が多く、軽トラ専用道路みたいな狭い農道に入り込むことが多くなったのも、購入の動機となるところです。

真実は衝動買いですが、弊社ではメタン発酵式の堆肥製造で特許を取得しており、そのメタンガスで発電し電気自動車を走らせて見たいとの夢もあります。実際に年間3万キロ以上走行するとは想定していませんでしたが、今後も間違いなく走行距離は伸びることになるので、10万キロ以上の走行で電池を交換する必要があるかに自分の関心は移っております。因みに三菱自動車の発表では、電池交換に工賃込みの89万円で交換できるようで、交換後は自宅に65%程度に劣化した10kw程度の蓄電池を設置することができます。交換しながら30万kmは利用したいと思っております。

パナソニックの家庭用蓄電器は、1.6kw70万円で、10kwでは400万円の価格になりますので、電気自動車の電池は非常に安いのですね。日常では、ナイト10の契約の会社名義の200v充電に、自分でタイマーを設置し夜10時以降に充電しており翌朝には常に100%充電(120km程度走行)になっております。この1年間で60000円の電気代を使いましたが、2円/kmの電費となります。ハイエースでは42万円プラス、オイル代6回2万円使いますので、年間38万円の燃料費削減となります。この金額はガソリン車のミニキャブを利用した場合でも同様の差額と思われますが、5年間で190万円となり、220万円で購入しましたので、15万km電池が持つようなことがあると、十分なメリットと言えます。

33000kmのすべての電気を会社で充電したのではなく、遠くへ行く時には、無料の急速充電器を使わせていただいております。おそらくは12%程度が無料充電と思われます。

弊社では、自宅兼作業場に普通充電器、5km離れた弊社堆肥センターに3相200Vの普通充電器で計2箇所に設置していますが、単に200V2芯2sqの細い電線で十分で専用の恰好いいパナソニック製のコンセントで3500円で設置できます。

電気自動車を購入する場合に、賃貸住宅の方は無理ですが、戸建住宅、工場、倉庫を所有している事業家は、数台の普通充電器を設置することが多いと思われます。内燃車と電気自動車の最大の違いは、ガソリンスタンドで燃料を購入する必要がないということで、7200万台にガソリンスタンド4万箇所に拘る必要は全くなく、各自宅、工場に所有台数に匹敵する普通充電コンセントが設置されるということです。

10万台の電気自動車は10万箇所の普通充電器を設置していると考察して問題ないということです。それも基本的には夜間のみの充電が80%以上になると思われます。

また、現在までにCOCO充電の情報では、1487箇所の急速充電器が設置されているようですが、先日もスキー場に向かうのに日産自動車今市店で、往復2回充電させて戴き、行き(夜10時)帰り(夕方6時)で営業時間でしたが三菱車に拘らず無料で充電させてもらいました(感謝)。

急速充電器は、関東では越谷のイオンで急速充電器3台を設置してくれており、現在までに無料ですが、買い物や食事中に充電できるため非常に使い易いです。また、群馬県では温泉がある道の駅に充電器が設置されており、何よりの贅沢と思って利用させてもらっています。首都圏では、葛飾区、中央区、国立市などで24h無料充電が設置されており、営業などで首都圏に向かう場合でも、有効に利用させていただいております。

電気自動車の欠点は、往復で帰れない距離を走行する必要がある場合に、30分程度の充電を行う必要があることですが、最近の日産ではwifiが充実していたり、アンドロイド携帯でデザリングを行うことで、会社でのネット仕事もその時間で行うことができ、この文章も日産自動車今市店で充電中に執筆しております。

電気自動車を普及する必要の賛否をここで論じるつもりはありませんが、その普及に充電箇所が少ないというのは全くの間違いであります。年間3万キロも走行する一般ユーザーが実在するか解りませんが、サラリーマンが通勤1日100km走行するとしても、自宅の夜間充電で十分で、急速充電器を利用する必要はありません。また、平日は使用せず、休日だけに利用するのであれば、年間走行7000km程度の一般ユーザーが主流になると思われ、休日に急速充電器を利用することが多くなり、休日は順番待ちの問題になる可能性があります。つまり、急速充電器はその利用の80%以上がレジャーやショッピング目的と限定して間違いありません(現行問題の神奈川県のタクシー利用は制限すべきである)。

高級車、ハイブリット車や電気自動車を購入する動機は其々と思われますが「いつかはクラウン、そのうち外車に乗りたい」など、車はいわゆる成功者のステータスになっており、35年程前、Car Graphic誌上の広告で「年収3000万円を超えた方とジャガーについてお話ししたい」のキャッチコピーを高校生の友達と見ることでこれからの自分の未来への夢を描いたりもしました。

今の自分の車への憧れは、乗り心地と静粛性に限ります。知人のマジェスタ程度しか運転した事の無い自分としては、セルシオやベンツがどの程度乗り心地が良く静粛性があるのか知りません。軽ワゴン(バン)やハイエースワゴン(バン)の違いは、完全に内装の違いだけであります。商用車であるバンタイプは内装が全くなく鉄板が内部でも剥き出しで、防音処理がなされておらず、常に大きな騒音の中で運転しております。ミニキャブミーブの内装もバンであることから、鉄板が剥き出しで静粛性とは無縁の自動車のようですが、タイヤの騒音が煩いだけで驚くべき静粛性であります。勿論信号停車中やドライブスルーの順番待ちでは全く音がありません(スタットレスに替えてより一層低騒音になりました)。

静粛性のある高級車に乗ることは小さな自営業である自分には無縁で、貨物車を利用する必要がありますが、移動中の電話が非常に多い日常では、自動車の静粛性が非常に重要であり、思索に耽るための移動中の趣味の音楽鑑賞においても自動車の静粛性は非常に重要であります。また4トントラックを納品で利用後に電気自動車に乗ると疲れが癒されて行きます。休日などに家族と移動中の会話や、ipadを利用しての子供の動画鑑賞でもミニキャブミーブの静粛性が何よりも嬉しい事なのです。

電気自動車の昨今の論評では、本体価格の高価さと燃料代との差額、走行距離が少ないことの急速充電器の普及が少ないことが話題とされていますが、自分が思うには移動するためだけの車であることより、車に乗っている時の静粛性、乗り心地、運転性能が何よりも重要であり、車両価格の違いのほとんどは、スポーツカーやRV車を除けば、静粛性と座席や室内装備などに使われる乗り心地に対して400万円以上の車の価値があるように思われます。エアバックなどの安全性は、現在では車両価格での違いは無く、標準装備に近い時代であります(昔はベンツにしか付いていなかった)。

往復100km程度であれば商用の納品、営業に電気自動車をお勧めします。音もせずに出発し、走行中も非常に静かで、落ち着いてBluetoothイヤホンで電話をして客先の注文を途中で受けたりクレームにも対処できます。音楽やラジオも美しく聞くことができます。3万円の擬似正弦波インバーターを利用し650w程度のグラインダー、ドリル、草刈り機、パソコン、プリンターを利用できます。移動販売車の電気調理器具も照明も使い放題です。ipadでメール、ブログなどの業務を行い、Air Printで印刷し、訪問先にプレゼン資料を渡すこともでき、リアルタイムの写真も印刷して手渡しできます。電気自動車は、書斎でありオフィスであり工場であり、お部屋になります。

内燃車では、オルタネーターを回さないと電気が発生せず、常にエンジンを煩く起動しなくてはいけませんが、直流12v補機用バッテリーから交流100vに変換することは、電気自動車運転状態は駆動用バッテリー(330v)から常に補機用バッテリーにオルタネーターと同じように電力が供給されます。多少の電池冷却音が時々しますが、基本無音です。

三菱自動車のミニキャブミーブは、178~207万円(内燃96万円)で購入でき、高級車のような静粛性を持ちながら、牛乳や出前を配達したり荷物を運ぶのに最高です。また電気を利用する各種の仕事に最良です。iMievは、軽自動車で280万円は非常に高額ですが、軽自動車では考えられない静粛性と乗り心地を持っています。

リーフは、何と値下げで221万円(ナビなし)から299万円(ナビフル装備)の車両価格で購入できるようになり、急速充電設備で雑談した10名程度のリーフユーザーが、お話していたことは600万円以上の高級車の静粛性と乗り心地を持っており、特に噴き上がりの騒音なしに加速する未体験の加速感に病み付きになっていることなど、面白さの視点を変えると非常に価値のある未来カーと言えます。

リーフの宣伝のように家族と静かに会話をしながら、ショッピングやレジャーに向かう事が何よりも贅沢と思っています。実際に窓を開けて山道を走行すると鳥の声や風の音を感じることができます、近くの山道を息子と昆虫さがしに向かった時、窓を全開で低速走行中に並走する愛犬の息使いが静かに聞こえるほどです。

現在、福島原発事故以降、電気自動車は評価が非常に悪く、ハイブリット車の好調さからは雲泥の差の市民権のなさですが、今回のリーフの価格設定は、プリウスを意識した価格設定のようで、電気自動車乗りとしては応援したくなります。

急速充電器などの普及に500億円を使う予定のようですが、無駄なお金は使わないでいただきたい。急速充電器は現在の3倍程度でとりあえずは十分であり現在の技術力の設備を設置することより、現在の3倍の速度の充電システム(10分で80%)を開発することに予算を集中すべきで、330v60Aを、600v100Aの充電システムを是非早急に開発して頂きたい。また、普通充電器を設置する必要は全くなく、電気自動車を購入する個人、法人に普通充電器設置に一定の資金を提供すべきです(自分は三菱自動車から5万円キャッシュバックされました)。

提案

  1. 日産、三菱、トヨタなどのディーラーに急速充電器を設置し24h無料利用を義務化する。
  2. すべての高速道路SAに必ず複数台の急速充電器を24h有料利用(現行100円)で設置する。
  3. 大型ショッピングセンター(イオン422店舗、イトーヨーカドー180店舗)に1店舗に付き複数台設置することに補助金を提供し出来れば無料利用とする。
  4. 観光地、レジャー施設の周辺または現地の道の駅(966箇所)、温泉施設に複数台設置することに補助金を提供する(リーフなどの休日ユーザーが嘱望する設備である)。
  5. 充電だけが目的になる建物に設置することをしないで欲しい(GSには必要ない)。
  6. 現行の1/3の10分で80%充電出来るシステムを構築し普及する。

上記提案で重要なことは、すでに高圧電気を利用している設備に限り設置すべきで、低圧設備の事業所に無理に急速充電器を設置しないことが税金を有効に利用する重要な選択肢になる。

提案を実行する場合でも現状の急速充電器を3倍程度の5000箇所もあれば取り敢えず十分で、高圧設備が既にあれば、1箇所100~200万円で設置可能で、半額補助3500箇所35億円もあれば十分である。因みに日産が開発した急速充電器は1台65万円が本体価格らしくより一層少ない予算で十分である。

10分急速充電器の実現後及び、電気自動車の普及状況を鑑みながら、既に設置された上記施設に増設する形で設置台数を増やすべきで、コンビニ、行政機関など訪問目的が短時間の店舗には設置すべきではなく、長時間滞在し消費を促す設備に特化して設置すべきである。

既設の急速充電器設備は、ショッピングセンターなどではメイン玄関の最良の場所に設置されていることが多いが、全く余計な配慮であり、むしろやや遠いところに設置すべきで、無料を続けてくれるのであれば尚更、多少不便な位置に多めに設置すべきである。

電気自動車が2万台程度しか無いのに、充電設備を増やしても誰も利用しないと思われます。年間2万km以上走行する予定の軽バン使用事業者に特別の補助制度を設けて、軽バンや軽トラ(電トラ)を普及する政策を希望します(急速充電器は恐らく使用しません)。

山田高明氏の論評どうり、我が国は電気自動車を普及すべきで、太陽光発電のドイツでの失敗に学び、自然エネルギーに過度に期待せずに、福島の現実を真摯に踏まえつつ、より安全に整備された原発を常に危機感を持って運転し、天然ガス、バイオガスを利用する発電所を最高の熱効率の設備に改修し発電すべきであります。

運輸部門に使用されている輸入化石資源を製造部門利用に限るように、ハイブリットだけでなく電気自動車も未来に向けて普及すべきで、多少の不便を踏まえつつ、本当の近未来体験を出来るだけ多くの方に投資して頂きたいと思っております。

新政府や、官僚が未来に向けて真剣にエネルギー政策や輸出産業を考察する時、これからも自動車産業が我が国の外貨獲得事業であるならば、先んじた電気自動車の普及を次の国策として推進すべきであり、バッテリー産業も世界をリードできるようにすることに予算を配分すべきと思います。

進行波炉(4S)やキャンドル炉などの次世代原発が全世界に普及する頃には、ほとんどの普通乗用車が電気自動車になり、未来を作ったレジェンドはすべて日本の技術者の創意から生まれた事に日本人として誇りを持つことができます。

最後にCOCO充電のリーフユーザーが、エスティマも所有でお出かけのとき、いつも3歳の娘が言うそうです。
「青いブーブがいい」
「どうして?」
と聞くと、
「青いほうが静かで、パパママとお話しできるから」

松元 信嘉
有限会社バイオマスジャパン 代表取締役