4Kテレビには未来がある --- 青山 友紀

アゴラ

東洋大学教授の山田肇氏の「4Kテレビは失敗する」というブログを西和彦氏が批判しているが、2000年ごろにNTT研究所においてデジタルシネマを対象に世界で初めて4K超高精細映像の研究開発をスタートさせ、デジタルシネマの4K規格をハリウッドのデジタルシネマDCI標準に持ち込んだディジタルシネマコンソーシアム(DCCJ)の会長として、同じNTT研究所で研究をした山田教授がこういうブログを書くとは信じられないし、何を考えているのか理解に苦しむ。


4Kデジタルシネマの開発については始まりからDCI標準に採択されるまでの経緯とそれを物語にしたドキュメンタリー「デジタルシネマの侍達」を見ていただきたいと思います。

そこに描かれている4K超高精細映像の研究開発を始めて10数年が経過し、ついに映画館に4Kデジタルシネマの上映システムが世界で急速に拡大しており、4K撮影カメラもいくつかの企業が発売し、その価格も急速に低価格化している。そして4Kはついに映画からテレビに進出し、最近のCESやNABの展示会では4Kテレビがホットトピックの一つになっている。

映画のような大スクリーンでは4Kの高精細映像は必須であるが、テレビには必要ないのでは、という声も聴かれるが、どんどん大画面化し、映画よりはるかに近くでみるテレビではハイビジョンでも画素が見える段階にきており、ハイビジョンの4倍の高精細度を持つ4Kテレビの必要性が明確になり、4Kテレビの価格が下がってくれば西和彦氏が指摘するように、必ず家庭に入ってくるのは明らかである。

もちろん4Kコンテンツの制作はハイビジョンコンテンツ制作よりコストがかかる。しかし、4Kテレビカメラの低価格化、編集するサーバーの低価格化、4Kコンテンツを保持するクラウドの活用、4Kコンテンツを配信するネットワークやFTTH/LTEアクセスの配信コストを低減する圧縮符号化H.264さらに次世代符号化方式HEVC/H.265の登場によって、4Kコンテンツの配信コストの低減、など4Kコンテンツの制作、編集、配信、TV表示、の環境が整いつつあり、4Kテレビの普及環境は整いつつある。

このような状況を認識せず、3Dテレビの普及が進まないから、4Kテレビも同様だろうとブログすることはICTのコメンテイターとしての信頼性を損ねるものであり、元同僚として忠告せざるを得ない。

青山 友紀
慶應義塾大学理工学部訪問教授
東京大学名誉教授