AKB坊主騒動の的外れな議論 --- 坂田 航

アゴラ

AKB48のメンバー峯岸みなみさんが坊主で謝罪しているYouTubeの動画が話題を集めている。アゴラ上でも多くの論評が載せられており、新聞にまで記事が掲載されるほどの騒ぎだ。

「男ならともかく女性が坊主にするのは如何なものか」「週刊誌に報道されただけで坊主はやり過ぎ」などと様々な意見があるが、私は今回の騒動の本質はそこにはないと思う。

この週刊誌の報道はプライバシーの侵害をしているにも関わらず、そこの問題は追及されていないのだ。


今回の件に限らず、多くの俳優やタレント、アナウンサーが日々週刊誌の隠し撮りの被害に遭い写真まで掲載されている。それが個人の行動を同意なしに大衆に広めるというプライバシーの侵害をしているにも関わらず、それが問題視されていない。

有名人であるか否かに関わらず、個人の生活を暴露されればそれは人権侵害だ。しかし週刊誌やタブロイド紙は読者を囲い込んでおくために個人の権利を侵害して掲載をやめようとはしない。

確かに有名人の側としても報道されればその分名前がそこに掲載されるわけだから、芸能界から自然消滅していくのは防ぐことができるかもしれない。しかしながらそれは結果論に過ぎない。これは明らかに個人の生活を脅かしており、メディアが行なっている犯罪だ。

そういった現実を今回の「坊主騒動」は再び覆い隠してしまった。本来扱われるべき人権問題を「アイドルの扱い」の問題へとすり替え、本質を見えなくしてしまったのだ。

2006年にはタレントの松本人志さんが自身の生活を週刊誌に掲載されたとして裁判を起こし、裁判所が90万円の賠償金支払いを命令したこともある。

アダルトビデオ店の防犯カメラに写った映像を写真週刊誌「FLASH』に掲載され、プライバシーを侵害されたとして、タレントの松本人志さんが発行元の光文社と編集人に1100万円の賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は31日、90万円の支払いを命じた。  判決理由で深見敏正裁判長は「防犯カメラの映像は、週刊誌などに掲載されることは想定されていない。原告が羞恥(しゅうち)心を覚える写真を掲載することは受忍限度を超えて違法だ」とした。

47NEWS “光文社側に90万円賠償命令 松本人志さんの写真掲載”より

このように有名人の写真掲載はもはや社会問題となっている程であり、大衆に情報を提供する側である週刊誌は個人の権利を考慮しこうしたことは控えていくべきだ。

そして今回の騒動もアイドルが坊主になることの是非を問う前に、メディアとしての倫理を主題として議論がなされていくべきだ。

坂田 航
学生ブロガー
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