私は、8年ほど前から自社で新卒採用業務に携わっています。弊社は発電所などで使われる部品を加工している製造業です。国際競争力を向上させるために、私が採用業務を担当するようになってからは、良い人材を採用できるように様々な工夫をしてきました。例えば、テレビ・新聞などのメディアに自社を紹介いただいたり、大学等で講演をする機会を設けていただいたりしました。その結果、社員数30名程度の中小企業としては質の高い人材を確保することができるようになってきました。
34歳の私が初めてインターネットを使ったのは、大学2年のときでした。もちろんブロードバンドなどなかったですし、Web上で展開されるサービスは極めて限られたものしかありませんでした。今の大学生の場合、子供の頃からネットに親しんでいる人がほとんどであり、ネットを上手に扱うことで自身の市場価値を高めている若者を見ると羨ましく感じることもあります。
しかし、ここ数年、日本の教育にどっぷり浸かった「ゆとり」世代の日本人学生たちの能力は大きく二極分化しています。少し前では考えられないくらい幼児化した学生が激増する一方、ほんの僅かの学生だけが国際的に通用する力を身に着けつつあるあるように思えます。
私が近年驚愕した学生の例をいくつかご紹介しましょう。
(1)ある日、「Q&A」というタイトルのメールが届きました。本文には、「文系ですが、長井精機さんに就職してもやっていけますか?」と書いてあるだけ。学校名・学部名・専攻・氏名・連絡先など、書かれているべき情報は何もありません。弊社には、文系大学出身で活躍している社員も少なくありませんが、自身の情報を秘匿した非常識な問い合わせには、回答しようがありません。初めて連絡する相手に、このようなメールを平然と送りつけてくる異様な感覚は、理解に苦しみます。
(2)春休みに弊社で会社説明会を開催しました。就職Web媒体から応募した学生が6~7名参加し、無事終了しました。最後に、参加学生には説明会の感想を書いてもらいます。一人を除いた学生たちの感想文は順当な内容でしたが、南関東地方の中堅大学の学生は「家から3時間もかけて来たのに、予想していた内容と違った。けしからん」という逆恨みのような文章を書き残してゆきました。自分は100%正しくて、悪いのは全て自分以外のせいだと言わんばかりの因縁のつけ方に、開いた口が塞がりませんでした。
数年前までは、大手就職情報媒体で母集団を集め、説明会や選考を行っても、自社が求める学生を集めることができました。「ゆとり」の毒が学生に蔓延した今では様変わりし、マス媒体を使った選考には、合理性を見出すことが難しくなってきました。
パナソニックなどの大手企業が、新卒採用の大半を外国人にするというニュースは衝撃をもって受け止められたようですが、毎年新卒採用業務に携わってきた私には、この発表は遅すぎるくらいだと感じられました。弊社でも、近年の新卒採用は外国人留学生や、海外の大学・大学院生に軸足を移しています。内向き、知的水準の著しい低下、向上心のなさ・・・。これらは「ゆとり」世代のダメ学生に共通する傾向です。このような人物を採用していたら、会社は倒産してしまいます。
「ゆとり教育」という名の大衆愚民化計画を推し進めたのは文科省であり、今の学生にその責任がないことは事実です。しかし、多くの発展途上国に比べれば、日本に生まれたというだけで、日本人学生が相当恵まれていることもまた事実です。
海外の情報は、今ではネットでいくらでも探すことができますし、Web翻訳サービスも無料で使えます。ほとんどお金をかけずに海外に友人をつくることもできる時代、内向きで志の低い仲間と地元で群れてばかりいるのは、学生の将来を危うくする可能性をはらんでいます。
老婆心ながら、日本人学生諸君は、いい加減に目を覚ましたらどうかと思います。
(長井利尚 株式会社長井精機 取締役 twitter)
コメント
ゆとり教育は学習内容のカリキュラムであって、社会的なモラルについては、親の教育の問題ではないでしょうか。
子は親の鏡と申します。学生の倫理観に問題があるとすれば、その原因を教育のカリキュラムにではなく、社会的風潮や親に求めるべきではないでしょうか。
現に「お客様は神様である」という一経営者の言葉を都合よく解釈して、難癖をつける客は若い世代に留まりません。
果たして、学生「だけ」が目を覚ますべきなのでしょうか?
私自身も新卒採用に携わっており、また驚愕することもしばしばです。また学生間の二極化、採用のグローバル化というトレンド自体は賛同いたします。
しかし、事例として挙げられたマナーと能力を混同して語るのは間違いではないでしょうか。
例に挙げられた学生に問題がないとは言いませんが、(1)の学生も社会人になれば「○○と申します。お世話になっております」で始まるメールを書くでしょうし、(2)については貴社の説明会の詳細がわからないものの、片道3時間かけてきたことを踏まえれば、あれば感情的になることを100%否定すべきではないのでは。さらにこれらを媒体戦略のミスと混同されるのもおかしいと考えます。
私も、学生「だけ」ではなく人事戦略に携わるすべての人(マネジメント、人事、選考に携わる現場社員、人材業界のベンダーetc.)が意識を変えるべきであると考えます。
長井さんの発言は、私も気になっていた事です。
大学生のキャリアサポート、インターンシップの運用で学生を見てきました。
就職活動は社会にでるリトマス試験紙です。一般常識を身に付ける機会が無かったのか、非常に社会性が欠けています。
自己中学生が増大している、学力が低下している。ぬるま湯にいて注意をされてこなかった今の学生はある面でかわいそうです。それにいち早く気付き、失敗を乗り越えていける人が内定をゲットしています。
失敗から学ぶ力を身に付けてくれれば成長も期待できます。
しかし自分の失敗に気が付かない学生は、救いようがないです。