中国の成長にかげり、国内には危うい大国意識--津上・池田対談

アゴラ編集部

アゴラ研究所は毎週金曜日夜9時から、ニコニコ生放送に開設したアゴラチャンネルで番組をネット放送している。3月8日は中国研究家で津上俊哉氏を招き、池田信夫所長との対談「中国バブル? 崩壊するのか」を放送した。

約1500人の視聴、700人のタイムシフト予約があり、視聴者アンケートで7割の満足度と好評を得た。(告知記事


中国の経済成長は減速へ

津上氏は、経産官僚出身でコンサルタント会社「津上工作室」を経営する。池田氏とは経済産業研究所(RIETI)の研究者として、同僚でもあった。

津上氏は、10年前サントリー学芸賞を受賞した『中国台頭–日本は何をなすべきか』(日本経済新聞社)で、中国経済の急成長を予想。ところがそれが現実になった後で、今年『中国台頭の終焉』(日本経済新聞出版社)を出版。それがベストセラーになっている。

「津上さんの考えはなぜ変ったのですか」と、池田氏は聞いた。「中国は成長によって得た変化を、国民の利益になる形に使えなかったのです」と津上氏は答えた。リーマンショック以降、景気落ち込みを避けるために、中国は全土で総額4兆元(日本円で08年のレートで50兆円以上)の巨額公共投資を実施。そのために、日米欧が低迷する中で景気の落ち込みが最小になった。

ところがそれは需要の先食い。しかも非効率な国営企業の延命や、累積する問題を先送りさせてしまった。特に土地バブルの懸念も残る。また農民工と呼ばれる地方出身の労働者の生活環境改善のために、公的支出も増え、地方政府の財政への懸念が広がっている。

また中国の経済成長を支えた諸条件の変化も起こっている。地方から都市の労働力の移転は一服。これは「ルイスの転換点」と呼ばれる発展途上国の経済成長で頻発する経済現象で、同じ事が起こった。さらに一人っ子政策で、労働人口のピークも過ぎた。「今後は経済成長が減速する可能性が高い」という。しかも統計が未整備で、経済の実態を反映していない面がある。これらの変化が経済での「台頭の終焉」と津上氏がまとめた理由だ。

大国化による中国人の危うい自信

「日本との関係はどうなるでしょうか」と池田氏は聞いた。津上氏によれば中国では、知識人から、一般市民まで、大国意識と言える自信を持ちはじめた。「150年にわたって欧米や日本に侵略されたり、国が混乱したたというトラウマが変るのは良い事でしょうが、それが諸外国との関係がうまくいかない原因にもなりそうで心配です」という。

不思議な事に、中国は個人個人は優れた人が多いものの、多くの組織でマイクロマネジメントが上手にできないという。現場の長が、上司とコミュニケーションを取らずに、自分の責任で物事を処理しようとする。「尖閣での衝突、反日暴動の混乱などは、中南海(最高指導部の居住区、転じて指導部のこと)が全部管理しているとは思えません。末端の暴走で外交や経済が混乱する可能性はと否定できない国です」という。

今年発足する習近平氏の政権は、山積する内外問題に向き合う。「習さんは国の問題を理解はしているようだが、どこまで解決できるかは分かりません」と、津上氏は話した。しかし習氏は良いイメージをつくろうとして国のさまざまな場所にいいことを言う八方美人的な対応を現時点でしており、「国民の期待は高まっているようです」と、津上氏はまとめた。巨大な隣国の先行きは一段と不透明になっていることが、今回対談で改めて示された。

今後アゴラは、一連の映像コンテンツをまとめ、読者の皆さまに提供していく予定だ。

(アゴラ編集部)