アメリカも日本も株式市場が熱いのですが、なぜ、これほど株価が上がるのか、いくつか理由があります。投資家は闇雲にそのお金を市場に投入しないわけですからリスクをとってでも投資をしたくなる訳がありそうです。
今日はその中でも「一株当たりの利益」について注目してみたいと思います。
A社は利益100億円。発行株式数が10億株としましょう。とすれば、この会社の一株あたりの利益は100億÷10億=10円ということになります。株式市場では一株あたり利益に対して何倍の倍率まで株価が買われやすいという一つの目安があります。これが株価収益率です。たとえばA社の株価が150円であれば15倍まで買われているという表現をします。
さて、この株価収益率は何倍が適正か、という議論は何十年と続いています。ご批判もあるとは思いますが、私は投下資本に対する利回りという考え方に変換しています。これは1÷株価収益率で求めています。たとえば上述の15倍ならば6.7%、仮に20倍ならば5%だし、10倍ならば10%であります。私は会社経営者としてこの投資からどれだけのリターンが得られるのか、というのは投資尺度として重要だと捉えています。特に不動産の賃料収入の際の利回りはその%が大きな決め手のひとつだということはその世界にいる方にはよくお分かりいただけると思います。
通常、リスクビジネスをする場合、最低5-10%は欲しいところです。一方、銀行の定期預金ならばカナダでは短期で大体1.4%ぐらいつくと思いますが、なぜ、低いリターンで満足するかといえばリスクが極めて低く、投資家(預金者)はほぼ、銀行にお任せでよいからであります。これが基本です。言い換えれば景気が良くなると思われれば株価収益率がより高い高株価でもリスクが少ないと考え買い上がるともいえます。
もうひとつ、新しい産業や業種が勃興すると株価収益率は常識感をはるかに打ち破る50倍とか100倍といったところまでなんら躊躇なく買いあがることがあります。最近のiPS関連銘柄がそうですが、理由は将来性ですがその意味とは何でしょうか?
わかりやすい例を出しましょう。ある人がアイスクリーム店を一店舗、オープンしました。売り上げに対するコストは材料費20%、人件費30%、家賃10%、広告宣伝ほか事務所経費30%、利益20%です。この店がメディアに取り上げられ大人気。そこでオーナーは二店舗目を出店します。その際、事務所経費は一店舗目も二店舗も大して変わらないことから利益率は大幅にアップします。これが5店舗になると自前の工場を持ち、結果として材料費も下がります。これがいわゆる規模の経済なのです。結果として当初利益率20%だったこのアイスクリーム店は10店舗出すと利益率は30%に上がっているのです。この考え方を上場会社に当てはめればM&Aや合理化を進めれば利益率はアップしやすくなります。
ここがポイントで投資家はこの会社(或いは業種)は株価収益率はこれぐらいが適正と思い込んでいたとすれば利益が上がり株価収益率が下がれば安いのでもうちょっと株価は高くてもよい、ということで株価が高騰する理由を見出すのです。
今、アメリカも日本もまさにこの現象が起きているといってもよいかと思います。史上最高値をつけたダウの現在の株価収益率は15.7倍で2007年に史上最高値をつけたときに比べてまだ上値余地があるとされています。理由はたくさんありますが、そのうちのひとつがアメリカ企業の体質が筋肉質になり、キャッシュフローが改善し利益率が高まっていることが挙げられます。
企業は新陳代謝を続けることで無駄を省き、株主や社員への還元を十分に施すため経営効率を高めます。M&Aもそのひとつでしょう。結果として勝ち抜く企業はより高い利益を生み出す基盤が出来るのです。時として基盤そのものを揺るがす時代の変化もありますが、それに対してはバフェット氏がコカコーラに注目しているのはコーラがこの世の中から突然なくなることは考えにくいという前提から来ているはずです。
上場会社にかかわらず、ビジネスを長くやっている会社の経営効率はそれなりに改善されるものです。日本やアメリカなど先進成熟国の企業業績は新興国に比べて基盤が圧倒的にしっかりしているともいえるのでしょう。そしてそれが数字で表されたとき、投資家は割安感を見出すのです。
長くなりました。今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年3月16日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。