中小企業金融円滑化法が3月末で切れます。亀井静香大臣(当時)が旗振りをして大きな話題となった法案で、中小企業が当時のリーマン・ショックに伴う経済の激変に耐えうるため一種のモラトリアムとしての時限立法でした。その後、延長もあったのですが、今般終了に至るものです。
私は当時からあまりよいアイディアではないと意見しておりました。勿論、中小企業が倒産してもよいという意味ではなく、もう少しふるいにかける等の方法があったような気もしますし、それ以上にバブル崩壊後、必死のリストラでようやく体力が戻った金融機関に再び不良債権が溜まる公算のあるスキームもどうかと思っていました。
さて、今後、法制化されたバックボーンがない状態で30数万社が利用したといわれるこの行方はどうなるのでしょうか? ある意味、そちらの方に焦点が移ってきています。
私が見る限り一言でまとめれば「少しずつフィルターにかけて振り落とされるところが出てくる」と見えます。
まず、この制度をまじめに利用し、まじめに企業体質を更正し、立ち直りかけている兆しがある会社は当然金融機関は引き続き援助の手を差し伸べるでしょう。金融庁もその旨の通達は出しています。
では、この4年間に業務の改善が行われなく、経営基盤が引き続き不安定な企業はどうでしょうか? 首相官邸のウェブサイトに「独力では経営改善計画の策定が困難な小さな中小企業・小規模事業者に対して、全国の認定支援機関(税理士、弁護士、地銀・信金・信組など)が計画策定を支援します」とあります。要は企業の経営内容を見直し、その方向性について相談に乗るということかと思います。その方向性とは当然ながら「このまま継続」「改善して継続」「大幅なリストラ」「回復不可能」などの判断が行われるのではないでしょうか?
その場合、政府としては二つの援助プランを用意しています。ひとつはセーフティネット貸付で貸付資金規模5兆円、もうひとつが借り換え保証でこちらも保証枠が5兆円となっています。セーフティネット貸付の場合1.45%程度の金利の上に条件を満たせばボーナスが最大0.6%ポイントつくようになっています。この内容からすれば好条件にみえますので利用希望者は殺到、枠は通常なら簡単に枯渇すると思いますが、そこに到達するにはいわゆる「審査」を厳しくするのではないかという気がしております。
また、一番厄介なのがまったく改善の見込みがない企業の幕引きをどうするか、ということかと思います。いろいろな説や噂はありますが、仮に3万から5万社がボーダーラインにいるとしましょう。日本経済を好転させ、デフレから脱却し、再び成長路線に乗せると頑張る安倍内閣にとってこの法案が切れた時点で突然、日本中倒産の嵐が吹き荒れたらどうなるでしょうか? せっかく太陽が顔を出そうとしているのに再び厚い雲に覆われてしまいます。
それを防ぐために時間をかけて処理をするとしか思えないのです。これは特に信用金庫などローカルバンクが抱え込んでいる円滑化法案に伴う債権に不良化しているものが多いのではないかと言われている手前、金融機関の不安が起きないようにする意味もあるかと思います。
そういえばこの10日ほどの間にノンバンクの株式が急騰したのですが、理由は金融機関で断られた融資をノンバンクに持ち込むのではないかという発想からでした。メガバンクにはノンバンクを抱えているところもありますのでそちらとの二人三脚もシナリオのひとつでしょう。
ところで日本がバブル崩壊後、失われた15年とか20年といわれたひとつの理由はその処理に時間がかかりすぎたことにあるとされています。アメリカはリーマン・ショック後、極めて早いスピードで矢継ぎ早に対策がとられました。これが6年後にアメリカ住宅市況の本格回復に繋がってきているとすれば今回の「隠れ不良債権の膿だし」もあまりにも時間をかけない方がよいのかもしれません。
グローバリゼーションは猛スピードで進んでおり、過去4年間で復活の見込みがないならばそれは10年かけても無理である可能性は高いものです。その辺の見極めはある程度厳しく行うべきであるし、ゾンビを生かしておくのは日本経済の再生には決して好ましい姿ではないと思います。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年3月31日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。