「春の嵐」が到来。皆様、ご無事だったでしょうか?
疾風怒涛といえば、新社会人の皆さんにとって先週は初めてのお仕事ウィークで無我夢中だったはず。ライフネットの岩瀬さんが書いているように、今はがむしゃらに目の前の仕事をこなす基礎修養の期間だ。
私も新人記者時代、記事の書き方以前に電話の取り方、受け答え方から学びましたからね。マナー研修とかも今しか出来ないのでおざなりにしない方がいいです。今回のお話はどちらかというと、ステップアップしたい20代後半~アラサー向けかも。ただ、一年目の方でも社会人として競争社会に飛び込んだ以上は、自分の身の立て方を考えなければいけないので参考にしていただければ。
先月、ちきりん女史が自分の強みを生かして勝負するという考えを否定して話題になったが、私は珍しく彼女に賛同できなかった。ニーズが無いところで強みを言い張ってもダメとのことだが、いわゆるプロダクト志向から脱せない旧来型日本企業の戦略の問題点を、個人の処世術に落とし込もうとするから無理があったんじゃないか。
人間、やはり向き不向きや個性がある。大学院で研究ばっかりやって人付き合いが苦手だった新入社員が営業マンやっても成果でないし。逆に調理師の免許を持っていて夜のお店に勤めているなら、空いている昼間の時間に主婦向けの料理教室を副業でやれば、新たな食い扶持を生み出せる。どこで自分が強みを発揮できるか、いや正確にはどこで自分が一番強くなれるか。ポジショニングとか「立ち位置チェンジ」って、馬鹿にできない(ちなみに、ちきりん女史は、「採用基準」の伊賀さんと同一人物とかいう噂があるが、その違いを論じるのは、キン肉マン世代的には「モンゴルマンの正体はラーメンマンか?」と問うような無粋さがあるので、ここら辺にしておこう)。
●なぜ壇蜜はAVに出ないのか
で、話をポジショニングに戻す。ま、熟女ブロガーより壇蜜さんの話の方が男性のニーズは確実にありそうだな(笑)。
シビアな芸能界で、それも29歳でデビューという異色の経歴で彼女が何故のし上がってきたのか、処世術としては見習うべき点がある。週刊ダイヤモンド(2012年12月22日号)での彼女のインタビュー記事で彼女は次のように語っている。
…(略)…自分の立ち位置をマッピングした時に、AVでもなくグラビアでもない、「新しいエッチなお姉さん」というカテゴリーに自分を入れたい。10~20代のアイドルが多くて出てきて、なんとなく若年化している世界で、憂いとかエロさを売りにした「大人の女」というジャンル…(略)…
――というのが彼女のポジショニングだそうです。いやぁ、彼女の鋭いビジネスマインドの一端がうかがえて初めて記事で読んだときはゾクッとしましたよ。それまで彼女のヌードを見ても「ハアハア」しなかったけどね、わはは。ここら辺、高校を中退していきなり芸能界デビューする10代のグラビアタレントには真似できませんね。伊達に社会人経験があるわけではない。AV出演については、一時的な知名度上昇や金銭的なメリットがあるものの、テレビなど一般メディアに出られなくなる現実もちゃんと見据えている。
●LINEもポジショニングの勝利
ちきりん女史が否定した自分の強み戦略だが、立ち位置を変えることでニーズを生み出すこともある。そういや、きのうの朝日新聞の別刷り「be」で早稲田のサークル(放送研究会)の後輩である舛田淳君がドドンと紹介されていたが=写真=、彼が仕掛けたLINEもポジショニングの勝利だ。
朝日のデジタル版は最近ケチで記事を無料開放しないので(苦笑)、そこら辺の戦略は、こちらの日経電子版の記事をご参照いただきたいが、Facebookのように友人同士のコミュニケーションはしつつ、「クローズドでプライベートなコミュニケーションが求められた」(本人談@「be」)というポジションを探し出せた結果、あのサービスが生まれた。アプリの技術的には、ノーベル賞級の開発だったわけでは決してない。ヒット商品が生まれた秘訣はよく語られるし、経済メディアで報じられるけど、そこで語られる要素を個人の生き方にも当てはめてみると示唆が得られるんじゃないか。
もちろん、立ち位置をすぐにチェンジするばかりでは、単に「ブレ」ただけに終わる。試行錯誤でマイナーチェンジはしつつも、たゆまぬ努力は必要だ。日経の記事によると、LINEも立ち上げ当初の2カ月で社内事情もあって苦労があったようだ。日本より先に中東でLINEがブレイクしていなければ、国内で今のように波及しなかったかもしれない。綱渡りの局面もあったろう。
各メディアでの舛田君のインタビューで印象的なのが、「未来のことは誰も分からない」と謙虚に語っているところだ。成功へのシナリオを描く上で自信は持ちつつも、裏では暗中模索を壮絶に続けていることがうかがえる。新社会人の皆さんには、この言葉を贈りたいですね。未来のことは分からないから面白いし、やりがいがある。
自分の強みや価値をどこでどうやって最大限に発揮できるか、そのためにどう前へ進んでいくか――。私もまだまだその途上だが、壇蜜さんのしたたかな戦略と、舛田君の努力を参考に自分の生かし方を追求していきたいものです。
新田 哲史
Q branch
メディアストラテジスト/コラムニスト
個人ブログ