3月のアメリカ雇用統計からみえること --- 岡本 裕明

アゴラ

3月のアメリカ雇用統計は市場の期待である純増20万人程度の半分以下である8万8千人増に留まり、一時的にパンチを食らったような感じになりましたが、前二ヶ月分が上方修正されたことで市場は多少妥協させられたといったらよいのでしょうか?


今回の雇用統計は「純増10万人」を9ヶ月ぶりに下回ったということがひとつの話題ですが、失業率は1ノッチ改善して7.6%となっています。私はここに興味を持ちました。理由なのですが、労働参加率が63.3%と1979年5月以来の低さとなっているのです。

労働参加率とは労働力の典型的年齢層である16歳から64歳の年齢層のうち、労働意欲がある者の就業率であります。つまり学生、専業主婦、早期退職者はカウントから除外されます。この労働参加率、グラフで見ると1973年ごろに60%を一時的に下回った後、女性の社会参加意識の高まりによりその数字は右肩上がりとなり、2000年ごろに67%を超えましたが、それをピークにその後、徐々に低下しています。特にリーマンショック後の2008年からはその参加率の低下が早まっています。

理由のひとつにブーマーの退職時期にかかっていること、もうひとつはリーマンショックで再就職先が見つからず、就職をあきらめた人が多いのではないかということかと思います。人口ピラミッドをみるとアメリカの場合、日本ほどではありませんが、釣鐘型である点は変わらず、今後、労働人口は逓減するトレンドをとると見ています。また、アメリカは移民政策を比較的厳しくコントロールしているため、これが最終的に労働参加率を下げる理由を作るかもしれません。

アメリカの失業の主たる問題点は低所得者グループとされています。よって、オバマ政権が本国回帰政策であるアメリカ国内の製造業を本気で強くする気であれば失業率は大幅に改善され、労働者の収入も向上することでアメリカの経済は回るのではないかと思います。

その昔、デトロイトで黒人を自動車工場で大量採用したことでアメリカの労働市場が一転したのですが、今、大量雇用が出来る業種はシェールガス関連ではないかと思います。ただ、採掘はすれどそれに対する需要が追いつかないという状況で市況はまだゆるいですからアメリカがシェールガスをいかに輸出産業化するかによってアメリカの雇用事情は大幅に変化する可能性はあります。

たとえばLNGの日本を含むアジア向けへの輸出は施設建設に伴う投資、雇用、地域経済の活性化、更には継続的で安定的な税収、最後にアメリカの貿易収支改善に大きな弾みをつけるはずです。更には天然ガスを石油の代替エネルギーとなるようさまざまなシーンで利用できるよう工夫することがアメリカ回復へのキーになると見ています。

それは結局何を意味するかというとQE3まであった金融緩和はつなぎであり、その間、国内の構造改革を進め、体力をつけ、新産業を興すことがその回復に繋がるということではないかと思います。

日本でも「異次元の金融緩和」が今年の流行語大賞上位になりそうな勢いですが、安倍内閣発足4ヶ月でまず、短期対策として行った施策としては効果的だったと思います。ただ、これが恒久的対策になるわけではなく、「繋ぎ」だという認識のもと、日本がどのような構造改革を行い、まい進する道を見出すのか、これが大きなポイントになってくるのではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年4月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。