日本の会社には「正社員」という人がいます。そういう肩書きが正式にあるわけではないのですが、「雇用期間に定めのない社員」をそう呼ぶ習慣になっています。雇用期間が決まっていないということは、いつクビになってもおかしくないのですが、実際には定年までやとうことになっていて、これが「終身雇用」とよばれています。
正社員ではないアルバイトやパートなどの契約社員は、「非正規労働者」と呼ばれています。なんだか変な労働者みたいな名前ですが、仕事の内容は正社員と変わらないことが多く、上の図(社会実録データベース調べ)のように労働者の35%は非正規労働者です。それなのに給料は2倍ぐらい違い、1年とか3年の短期契約で、契約が切れたらクビになります。同じ仕事をしているのに、身分保障がない上に給料が半分なんて不公平ですね。
そこで厚生労働省は、労働契約法を改正して「契約社員を5年やとったら正社員にしなさい」と規制しました。つまり契約社員は5年以内ならクビにしてもいいのですが、それ以上やとったら定年までやとい続けなければならず、給料も2倍にしろというのです。
小学生のみなさんが社長だったら、こういう規制ができたらどうしますか?
はい、よくわかりましたね。契約社員を4年11ヶ月でクビにすればいいのです。多くの人がそういって反対しましたが、厚生労働省は去年、法律を改正してしまいました。
おかげでトラブルがたくさん起こりました。特に困ったのは、大学の非常勤講師です。これは普通の大学の教授と同じ授業をしているのですが、1コマ(90分)で7000円ぐらいとアルバイト並みの給料しかもらえない上に、身分保障もありません。このため10コマぐらい掛け持ちして生活している非常勤講師もたくさんいるのですが、今年、早稲田大学は突然「すべての非常勤講師の契約を5年で打ち切る」と就業規則を改正したのです。
これに対して首都圏大学非常勤講師組合が「今まで長期契約で働いていたのに、一方的に5年契約にしたのは違法だ」と、早大を労働基準法違反で告発すると発表しました。これからもこういう紛争が全国でたくさん起こるでしょう。今まで長期でやとわれていた契約社員を「5年以内にクビにしろ」という法律をつくったのだから当たり前です。
日本は、こんな小学生でもわかる簡単な理屈もわからない官僚が労働行政をやっている国なのです。