北海道の江差にあるオーベルジュ、「旅庭 群来」に来ています。函館空港から約70km。日本海の海沿いに建つ奇抜な建物が印象的です。
まず建物の中に入ると、中庭に圧倒されます。河原のように石が大量に敷き詰められ、その真ん中に彫刻家安田侃氏の石のオブジェが置かれています。スタイリッシュな建物と美術館のような中庭のデザインは今まで見たことのない宿の風景です。
しかし、このオーベルジュの魅力はそこだけではありません。
チェックインする前に宿が直営で経営する「拓美ファーム」に寄ったのですが、季節の様々な野菜から、鶏、羊まで様々な食材を生産してオーベルジュの食材にしています。社長の棚田清さんは、33年かけて羊の餌を改良し、イギリスのサフォーク種という品種から最高の肉質と脂を生み出す飼育の方法を見つけ出しました。夕食に出てきた、石の上で焼いて食べる羊は、上品な脂があって素晴らしい味わいでした。
この農場の凄いところは、鶏舎や羊の飼育棟に入っても、あの家畜の嫌な匂いがまったくしないことです。発酵させたりして工夫した餌を与えているのと、掃除をして手入れが行き届いているからではないかと思いましたが、クオリティの高さを示しています。
しかも、このファームではオーベルジュで出た野菜くずなども動物に与えたり、たい肥を作るのに使ったりと無駄にせず使用し、生ごみが一切出ないリサイクルを完成されているというのです。自然本来の循環サイクルが出来上がっているのです。
夕方から対談の収録で、オーナーの棚田清社長とゆっくりお話することができました。60代になってから宿泊施設の経営という新しい挑戦に乗り出したそうです。お話をしながら、つい引き込まれてしまう。いつまでも衰えない好奇心と人生を楽しむ極意を持った魅力的な方です。宿について、あるいはファームについて私が感想を言うと、スーツのポケットからマメにメモを取りながら話を聞いています。すべての情報を仕事の改善に活かしていくという向上心。人間の成長には年齢は関係ないと、その姿勢がとても勉強になりました。
2015年には新幹線が北海道に乗り入れ、この宿に来る人もさらに増えることでしょう。
美味しい料理と素晴らしい温泉、そして最上級の室内空間、そして人間味溢れる魅力的なオーナー。わずか7室しかない極上の空間です。北海道に行くなら、道南にも足を運び、こんな素敵な宿で何もしない贅沢をしてみるのも良いのではないでしょうか。
1泊で帰ってしまうのが勿体ないオーベルジュでした。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年4月10日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。
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