衰退する新聞に未来はあるか?

山田 肇

新聞の発行部数は減少が続く。日本新聞協会の統計では2012年は4747万部で、02年の5320万部から約1割の減少である。同時に読者層の高齢化が進んでいる。同協会の『2011年全国メディア接触・評価調査』によれば、新聞を毎日読むのは、70歳代では85.8%であるのに対して、20歳代では25.5%に過ぎない。10年前の同じ調査で、20歳代で新聞を毎日読むのは44.7%、30歳代では62.9%だった。それが10年後の30歳代では37.4%、40歳代では60.0%である。新聞を毎日読んでいた人も、10年の間に新聞から離れている。

「駄目なものはダメ」とばかりに、論理性に欠く感情論を掲載するばかりでは、購読を続ける気にもならない。新聞はこのまま「高齢者の友」として死滅していくのだろうか。


電子版の契約数は伸びているか? 『朝日新聞デジタル』の有料会員数は3月5日までに10万人を超え、無料会員も99万人を数えているという。日本経済新聞は1月17日の記事で、昨年末の段階で、電子版単体契約者が12万、新聞との併読を併せれば25万、無料会員も加えると169万と公表している。「紙の」日本経済新聞の販売部数が291万なので、無料会員数は半分に達するが、電子版に金を払っている読者はまだ10%未満である。

新聞の廃刊が続くアメリカでは、一方で「ネット新聞」が誕生している。ProPublicaは調査報道が主体で、Sandler Foundationからの寄付金などによって運営されている。多様なソースからニュースを集めるアグリゲータThe Huffington Postは、広告収入で運営され、読者間の意見交換の場も提供する。2012年には、The Huffington Postが、デジタルメディアとして初めて、ピューリッツァ賞を受賞した。

「あらゆる情報はネットにある」は否定しないが、多様な情報の中から重要なものを選択し収集するのは普通人にはむずかしい。The Huffington Postはニュースを収集・整理し順番付けしてくれる。このような「編成」機能やProPublica流の「調査」機能を強化すれば、新聞の未来が開けるかもしれない。

情報通信政策フォーラム(ICPF)では、4月25日に、「新聞の未来」についてセミナーを開く。日本経済新聞の関口和一さんにぼくの考えをぶつけてみる。どうぞ、皆様ご参加ください。

山田肇 -東洋大学経済学部