去年、ニューヨークのウォール街で、「われわれは99%だ!」というデモが続きました。これはアメリカの上位1%の人がGDP(国民所得)の23%をもらっているという大きな不平等に、残りの99%の人々が怒ったものです。たしかにアメリカではこういう所得格差が大きく、また年々拡大しています。下の図は「ジニ係数」という所得格差のものさしで見たもので、数字が大きいほど不平等ですが、アメリカは断然トップです。
世界各国の所得格差(ジニ係数)総務省調べ
これに対して日本の格差は少しずつ上がっていますが、主な国のなかでは下のほうです。つまり「大金持ちが所得を独占している」という意味での格差はそれほど大きくないのです。税金をうんと重くすれば全員の所得を同じにすることはできますが、それだと働いても働かなくても同じなので、誰も働かなくなります。よく働いた人がたくさん所得をもらうという格差は、ある程度はあったほうがいいのです。
世代間格差(経済財政白書2005年度版)
上の図のように、2005年に生まれた「将来世代」――今の小学生のみなさん――は生涯で1億5000万円の税金や社会保険料(図の下の紫の部分)を負担しますが、それによって受け取る利益(上の青い部分)は1億円です。みなさんは社会保障で国からいくらもらえるのでしょうか?
受け取り-支払い=1億円-1億5000万円=-5000万円
あれ?変ですね。社会保障というのは国民の生活を保障する制度なのに、みなさんは一生のうちに5000万円も損する計算になります。他方で、みなさんのおじいさんぐらいの60歳以上の老人は負担が1億3000万円ぐらいで受益が1億8000万円なので、差し引き5000万円ぐらい得することになります。つまりみなさんとおじいさんの生涯所得の差は
みなさんの損+おじいさんの得=5000万円+5000万円=1億円
これはよく働いたかどうかとか、男か女かとかいう違いには関係なく、単に年齢によってこんなに生涯収入がちがうのです。この格差はまったく正当化できないし、それを放置すると若い人の勤労意欲がなくなってしまいます。おまけに公的年金の積み立ても800兆円も不足しており、これも将来みなさんが負担しなければなりません。
しかし国会では、この問題はまったく取り上げられません。選挙で投票する人のまん中の年齢は60歳で、老人が圧倒的な多数派なので、彼らの損になるような政策を掲げたら選挙に負けるからです。こどものみなさんも国会を占拠して「1億円も損するのはいやだ!」というデモでもしないと、この格差はますます大きくなるでしょう。