新聞は衰退するが新聞社はしぶとい!

田村 耕太郎

山田肇氏がhttps://agora-web.jp/archives/1529866.htmlと日本の新聞の衰退について述べておられます。おっしゃる通り、新聞のメディアとしての衰退と影響力の低下は必至かもしれません。しかし。新聞社の経営は話が別だと思います。新聞の影響力が低下しても新聞社がバタバタ倒れるというようなことは当分ないでしょう。日本のメディア経営については情報公開が十分でないため外からイメージで議論がなされていますが、色々あるけど日本のドメ・メディアはしぶとい体力持っています。だから改革が遅れているのですが・・・


まず新聞の発行部数の減少割合。山田肇氏のご指摘は「新聞の発行部数は減少が続く。日本新聞協会の統計では2012年は4747万部で、02年の5320万部から約1割の減少である。」というもの。10年で1割なんです。1年で1%という減少に過ぎません。

日本の今後の高齢化も非常に危惧されていますが、ピークでも年間の人口減少率は1%以内です。これ私は十分対応可能と見ますが、新聞の部数減少とほぼ同じなのです。もちろん、楽観はできませんが、このペースなら経営的に十分対応可能です。

上記の朝刊紙の減少部数の大部分は全国紙と見られます。地方紙は一般に堅調です。部数も全国紙ほどは落としておりません。選択と集中が不明瞭な全国紙と地域に根差している地方紙ではけっこう業績が分かれているようです。記者も地元出身者が多く、冠婚葬祭等はじめ読者の家族やペットまで紙上に登場させる地域密着度の高い地方紙は今でも強いです。しかも、広告収入も全国紙に比して基盤が強いと思います。地元占有度が高いと住民への到達度が高く、地方では他メディアに比して圧倒的に信用も高いので、広告効果も高いのです。

地方に食い込んでいる地方紙と比して、大きく部数減らしているのは全国紙ですが、彼らは大都市中心部にいい不動産持っています。一部を除いて不動産運用でまだやれます。アベノミクスで不動産は息を吹き返していますし(笑)。新聞業が揺らいでも新聞社は揺るがないでしょう。

余談になりますが、経営的に言って、部数と記事の質ははっきり言ってあんまり関係ありません。いい記事書いてりゃ売れると思っているナイーブな人は新聞社にはあまりいないと思います。もちろん、日本の新聞では「言論」と「報道」がよく混同されていますし、分析記事が弱く少ないという特徴もあります。販売拡張目的からくるのか?中立公平という、言論としてはありえない立場をとることは今後改善の余地があるかと思います。

最も読まれている面はテレビラジオ面、社会面、健康・文化面、スポーツ面という感じで、後ろから新聞を読んでいく人の方が多いというデータもあります。アゴラの執筆者を筆頭に、インテリの方々はこの状況を好まれないかもしれませんが、嗜好は人それぞれで、その現実に紙面作りも対応しています。これは一部のクオリティペーパーを除いて世界的にそうだと思います。

日本の新聞社もテレビ局も世界的に高過ぎる人件費を世界標準にするだけでまだまだ経営できます。影響力の低下は必至ですが、色々言われる日本のメディア経営ですが、特に新聞社はしぶといし、瀬戸際にあるなんて状況ではまだないと思います