私はシステム屋さんなので、所謂、優良企業のお仕事もさせて頂くことがある。
実際に関わってみて、朝の3時に経過報告のメールを出して帰ろうとしたら、返信が来て帰れなかったとか(苦笑)。
超優良企業とされる企業でも、当然のようにサービス残業で徹夜をしているってことはありました。
しかし、そういう企業は「ブラック企業」とは言われません。
「ブラック企業」の批判のほとんどは、「激務の割に賃金が安い」。(高ければ問題ない)
詰まるところ、ブラックかどうかは賃金の多寡に集約されるのでしょう。
■ブラック企業は市場原理で賃金が決まる
ブラック企業と言われる企業は、総じて離職率が高いのですが、離職率が高いということは、それだけ雇用の流動性が高いといえます。
流動性が低い(年功序列のある)優良企業では、年齢などで賃金が決まってしまいますが、流動性が高ければ、市場原理、つまり、その時点の市場価値(≒能力)によって賃金が決まります。
マッキンゼーなどの外資系企業はブラック企業とは呼ばれませんが、十分に過労死の要件を満たすほどの激務が続くことで知られています。もちろん、離職率は非常に高く、やはり市場原理で賃金は決まっていると言えるでしょう。
それについて、「マッキンゼーは賃金が高いから良い」というのなら、マッキンゼーに行けば良い話で、ブラック企業にしか行けないのなら、それが現時点での市場価格と言えます。
であれば、市場原理で決まった価格(賃金)に文句を言うのではなく、自分の市場価値を上げるしかないのでは?「市場価格以上に欲しい」と言ったところで、何になるのでしょう?
■超好景気になればブラック企業は潰れる可能性も
自由競争ですから、いつも良い人材が集まるとは限りません。実際に、バブルの頃には人件費高騰と人材不足で潰れた(廃業した)企業が多くありました。
もし、アベノミクスが目論み通り成功しバブル期の様な超好景気になれば、「ブラック企業」というレッテルを貼られた企業は、新たに人を採ることが非常に難しくなります。
同時に人材の流出は続きますし、更に、引き抜きもされるようになるでしょう。
一度貼られたレッテルは簡単には剥がれませんから、かなりの好待遇に変えても人材不足は解消されず、成長を止める、あるいは事業縮小、最悪、倒産もあり得ると考えています。
そうなったとしても、ブラック企業と呼ばれている企業が、自由意志で選んだ方針の結果ですから仕方ない。
「入りたい」という人から、更に選別をして採用しているのですから、当たり前ですがブラック企業が奴隷狩りをしている訳ではない。
需要と供給の問題ですから、「ブラック企業に行きたくない」という人が増えれば待遇が上がります。上がらないと言うことは、需要があるということで、その需要を無理に潰すような市場を歪めることは良くない。
(超)好景気になれば自然に需要はなくなるのです。
■ブラック企業が普通になったらどうなるか?
ブラック企業は定着率が悪い分、積極的に採用を行います。ということは、普通になれば、採用は絞られることになります。
例えば、ユニクロが、「半年~1年で店長になる」という目標をもっと長く、「5~10年で店長になる」と方針転換して待遇を良くすれば離職率を10%に抑えることが出来るとしましょう。
そうすれば、店長の数が足りませんから、今のような拡大路線は取れません。
拡大しない上に、人が辞めないので、当然、今のような大量採用も出来なく(必要なく)なります。
つまり、50%が辞めて行ったときよりも、少ない雇用しか作れないわけです。
実際にそんなことはありませんが、辞めていった50%はみんな鬱になっていたとしても、それより遙かに多い失業者が、最初から生まれていたことになります。
ユニクロもワタミも十分大企業ですが、ベンチャーとしての拡大路線を捨てないからブラック企業と揶揄される様な形態になるわけで、拡大路線を捨てれば普通の安定企業になれます。
(もちろん、成長を諦めればすぐに衰退企業になりかねないから諦めないのですが)
普通の会社になれば、同時に採用(雇用の受け皿)もなくなくなります。
つまり、(成長期の)ブラック企業がなくなれば、失業率はもっと高まり、非正規になるか失業者になるしかない人が増えることになります。
と考えれば、ブラック企業が嫌なら、最初から非正規や失業を選んでも同じことなのです。
■使い捨てか?
「3年で50%の離職率は異常だ!」「使い捨てだ!」と言われるけれど、本当に使い捨てでしょうか?
採用・教育コストは、少なく見積もっても一人百万円は掛かります。
実際には数百万は掛かってるでしょう。
僅か3年間で「採用・教育コスト」を返して、更に利益を残して辞める人は、「使い捨てにされた」と文句を言うのではなく、(会社を)踏み台にしてステップアップして行きます。
「使い捨てにされた!」というような人達は、採用・教育コストすらペイしないまま、更にコストを積み重ねて辞めていきます。
ブラック企業は「常に人を切りたがっている」と勘違いしている人が多いのですけれど、当たり前ですが、そんなこと間違っても思っていません。企業としては、「せめて使える人材になって欲しい」と思っているのですが、それすら叶わず、仕方なく「損切り」せざるを得ないのが実情です。
終身雇用、年功序列のために若い頃に賃金を据え置かれた40代、50代の人がリストラに遭うのは、確かに「使い捨て」と言えますが、3年で辞めていくような人達は「使えなかった捨て」です。(あるいは、見事に踏み台にした人でしょう)
■心がけ次第
ブラック企業以外にも、優良企業も、厳しい外資系企業も、起業することも、ニートになることも選べます。
希望しても入れない理由は、本人の努力と、社会情勢という運不運にありますが、ブラック企業だって、不況を喜んでいるわけではない。不況に適合する努力をしているだけです。
努力しても希望通りに行かず、ブラック企業にしか入れなかったらそれは不況の所為で、ブラック企業の所為ではない。ブラック企業がやっている様に、適合する努力をするしかないでしょう。
適合するには、何度も言ってますが、「使い捨てにされる」というようなメンタリティーではダメです。
そんな風に考えれば確実に潰れ、鬱になって最悪生命の危機がある。
ブラック企業でやっていくには、考え方を「踏み台にしてやる!」あるいは、「ここで成り上がってやる!」のいずれかに変える必要があります。
「使われている(やらされている)」と思っているから、「使い捨てにされる(た)」となるわけで、そのメンタリティーが変わらないなら、最初から非正規かニートを選ぶ方が良い。
向き不向きの判断を採用担当者や上司に判断させる(無理です)のではなく、自分でするべきではないでしょうか?
ブラック企業と揶揄される会社にも、活き活きと働き、成長できたと喜んでいる人も数多くいる。
人には、向き不向きはあるのです。
鶏口牛後と考える人だっているんですから、「優良企業がとにかく良いんだ!」という一つの価値感になるのは、おかしいし、怖いことだと私は思います。
株式会社ジーワンシステム
生島 勘富
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