とある女性誌のマネーに関する取材を受けました。来月発売になるようですが、最近は若い女性の間でも株式投資が興味の対象になっています。
株式投資以上に気になっているのが、円安のようです。こちらは海外旅行やブランド品の値段など女性の趣味にもダイレクトに響いてきます。しかし、外貨資産を持つことには、興味はあってもどうやって外貨投資したら良いのかわからないという不安があるようです。
外貨投資というと、多くの人はまず銀行で外貨預金を始めるようです。外貨ニーズを取り込もうと最近はメガバンクの店頭で金利優遇キャンペーンというのをやっています。例えば米ドルなら外貨定期預金の金利を3%に優遇します、というようなものです。
日本同様アメリカも低金利が続いていますから、3%でもこれから始めようという人には魅力的に見えるのかもしれません。しかし、この優遇金利は最初の3か月だけしか適用されません。また為替手数料は外貨の売買ごとに1ドルに付き1円取られます。
3か月の3%の金利は年換算だと0.75%。さらにそこから20.315%の税金が差し引かれます。為替レートが変動しなかったとすると、為替手数料の方が金利より大きくなり、元本割れになってしまうのです。金利に比べいかに為替手数料が高いかということです。
同じ外貨取引の商品にFX(為替証拠金取引)があります。最近でこそ、「ミセスワタナベ」と呼ばれる日本人個人投資家が増えてきましたが、一般には極めてリスクの高い「危険な商品」という認識です。
しかし、このFX取引は外貨預金に比べ圧倒的に取引コストが低くなります。会社にもよりますが例えばドル円なら買値と売値のスプレッドがわずか0.4銭という場合もあります。多くのFX会社では、為替手数料は取らず、売りと買の価格差だけが取引のコストになっています。
メガバンクの為替手数料が買いと売りで2円(=200銭)とすると、単純計算でFXのコストはその500分の1ということになります(もちろん商品性は異なります)。
FXが危険だと言われるのは、レバレッジがかけられるからです。日本国内では規制によって25倍までに制限されていますが、それでも持っている資金の25倍の取引ができるというのは、4%マイナス方向に動けば、元本がすべてなくなってしまう、かなりのリスクです。
しかし、FX取引でもレバレッジを下げることはできます。会社によってはレバレッジ1倍コースという商品を提供しているところもありますし、そもそも自分で25倍の資金を入れれば実質のレバレッジは1倍。これなら為替の変動に伴うリスクは外貨預金と同じです。
私は、FXのデイトレードはしませんが、外貨の現金が必要になると、FXを使います。例えば、米国でドル決済しなければならない時は、FX会社に円を送金して、ドルの買いポジションを作ります。それを「現受」という方法でそのままドルに換えるのですが、市場の実勢価格に1銭以下のコストしか乗りません。ドルに換わったら、それを銀行にドル送金すれば、銀行に為替手数料を払わなくても外貨の調達ができます。
確かにFXの口座開設は何だか怖いし、やってはいけない世界に足を踏み入れるような気分があります(笑)。しかし、何も考えずに、「優遇金利」の外貨預金に大量の外貨を預け入れている人を見ると、そっちの方がよっぽど怖いと思ってしまいます。
自分で勉強して、考える習慣をつけないと、気が付かないうちに必要のないコストを支払ってしまう。金融の世界は、知識の無い人は合法的にお金を奪われていく仕組みになっているのです。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年4月24日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。