中東への農産品輸出を考える

田村 耕太郎

安倍総理が中東でも絶好調だ日本人を長寿にしたのは和食ではないと思うが、安倍総理は日本のセールストークに徹しておられるだけなので、そんなことはどうでもいい。中東への農産品輸出に関して切り込み隊長となった自負があるので今回はそれについて書きたい。私がドバイ、アブダビで鳥取県のスイカを三万円で売ってきた話は、小泉純一郎元総理が絶賛して、竹中平蔵氏とともに日本中に広めてくれた。詳細は私の処女作に書いてある(笑)以下の妙なものが証拠写真だ。きっかけはドバイの高級ホテルのスイカが大変美味しくなかったことから始まる。

アブダビスイカ献上


私がドバイに初めて足を踏み入れたのはファイナンシャルタイムズ紙の招待である。ファイナンシャルタイムズのグローバル・ファイナンシャル・マーケット・コンファレンスは豪華なメンバー。同じパネルは香港証券取引所の会長やシカゴ商品取引所の社長、ドバイの金融担当大臣も。仕切ったのが当時のCNNの顔であったアンカーウーマンだった。

宿泊ホテルとして用意されたのは当時ドバイ最高と言われたビジネスホテル。部屋もレストランもゴージャス。スパには死海と同じ塩分濃度の円形プールがあり、そこに浮いてリラックスするというプログラムもあり、それを試したが、本当に時差ボケがすぐとれた。体中塩だらけになったが・・・

ホテルの朝食ブッフェもラグジャリアス!パンもコヒーも料理もうまかった。しかし、いただけないものが一つ。オレンジやキーウィは美味しいのに、スイカがまずい。聞いてみるとイランやインドから買っているという。きゅうりのような味だ。でもUAEの人はこんなにまずくてもスイカが好きだという。歴史的にスイカから水分補給してきた国民だからだという。

その時、”はた”とひらめいた。鳥取のスイカは生産量では千葉県に負けるが、味では日本一だと勝手に自負していた。あのスイカを食べさせたらこの金満グルメの方々も幸せな気分になるだろうと。

当時、農水省は日本の農産物の海外輸出の旗振りを本格的に始めようとしていた。さっそくアクション!とばかりに、私は、ビジネスセンスあふれるJA鳥取の会長を口説き、農水省と鳥取県に働きかけた。農水省と県から補助金と人的支援を受け、JAと一緒にドバイ。アブダビでセールスをすることに。

外務省にも支援要請し、領事館や大使館をスイカのセールス目的に利用させていただることとなる。初出荷に合わせて、派遣チームを組み、私も先頭にたつべく、国会から出張許可を得て、ドバイへ飛んだ。

上の写真にあるように、政府要人や王室一族を訪ね、スイカを献上。試食してもらうと彼らの顔が破顔に!このスイカは砂糖水を後から注射したのか?とまでUAE閣僚たちに言われた。

ムハマンド皇太子にも謁見し、献上。さすがにここは写真を撮ることはできなかったが、後で大変美味しかったと日本大使経由で感想をいただいた。このような王族や閣僚に献上している様子は「UAE版皇室アルバム」のような番組が撮影にきており、ゴールデンタイムに放映されたという。日本から車や家電ではなくスイカを売りに真っ赤なスーツの政治家が来ていると話題になったという。ちなみにあの恰好はセールス着ぐるみ。スーツは赤でネクタイは黒いドットが入っており、靴は緑。スイカの実とタネと皮を現したのだ。これをネタばらしすると、怪訝な顔で見ていたUAEの偉い人たちは大爆笑。

スーパーでの鳥取スイカのセールはテレビ放映の翌日だったので、評判となり、スーパーがスイカ一個に着けた値段は3万円!このニュースは日本で逆輸入的に鳥取のスイカを有名にし、鳥取のスイカはキロ当たり日本一のスイカとなった。

ただ、私が学んだのは、空輸してまで農産物をセールスしていたらたいして儲からないということ。セールスの時はスイカの空輸費用の大半を国が補助金でカバーしてくれたから大きな利益が出たが、やはり農産物を空輸して売るのは、水や空気を高値で運ぶようなもので、割が悪い。

やはり、日本の農業技術で、トヨタやソニーのように現地生産すべきだろうという結論に達した。日本の農業技術もしっかりパテントを抑え、どんな環境でも再現できるものにパッケージ化し、それをサービスとして販売した方が、農産品を空輸するよりいい。

肉や果物は競争力があるが、現地生産の方が、鮮度もビジネス的にもベターである。その後、世耕現官房副長官が近大マグロの養殖技術のセールスにアブダビにいかれたり、ビジネスセンスある政治家がUAEに仕掛けを続けた。UAEは急成長する中東・北アフリカ市場のショーケースであり、アブダビ・ドバイで受ければ、その後背にある巨大な成長市場が狙える。

安倍総理は第一次政権の時もUAEに足を運ばれた。是非アベノミクス第三の矢につながる形で日本農業を強化し世界にセールスしてほしい!よろしくお願いします!