ビジネスパーソン必読!「イシューからはじめよ」は、やはり数年の1度の傑作 --- 内藤 忍

アゴラ

イシューからはじめよ」の著者の安宅和人さんとお会いしてお話する機会がありました。英治出版でこの本の企画・編集を担当された杉崎さんのご紹介で実現したものです。


この本を最初に読んだのは、もう2年半ほど前。当時の私のブログには、興奮気味に内容を紹介している文章が掲載されています。今回、安宅さんにお会いするということで、もう一度読み返してみました。

すると、驚いたことが2つありました。

1つは、内容にまったく古さを感じないこと。今月出た新刊と言ってもまったく違和感がありません。優れたコンテンツは時代を超えることを再認識しました。

そしてもう1つは、読み返してみて、以前とは異なる新たな気づきがたくさん出てきたことです。読み手の立場や理解度によって、得られるものが変わってくる。2年半前と違った自分が読むと、2年半前とは違った、問題意識やモノの見方が得られたのです。やはり、読み手のレベルを問うてくる手ごわい本です。

多くのライフハック系の本では、効率を上げるためのノウハウを「知の手法」として提供しています。しかし、アウトプットを高める、つまり「バリューのある仕事」をするためには、それだけでは足りないとこの本は指摘します。安宅さんのいうバリューの高い仕事とは

バリューが高い = イシュー度が高い × 解の質が高い

という2つの要素を満たしている必要があるというのです。イシュー度とは「自分の置かれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ」、解の質とは「そのイシューに対してどこまで答えを出せているかの度合い」です。

つまり、答えを出す必要のないことに対して高いレベルで解答を作っても、価値は生まれないのです。「イシュー度」の低い問題に必死に取り組んでも、時間を浪費するばかりでアウトプットは上がらない。

重要なことは、「イシュー度の高い問題を絞り込み、それを高いレベルで解決していくこと」。
問題解決能力よりも、問題設定能力が重要で、そちらを前に持ってくることがポイントです。

イシューを絞り込まずにがむしゃらに根性で仕事を長時間こなし、やった気になるのを、安宅さんは「犬の道」と呼んでいます。犬になって効率を上げることだけに、自分の大切な時間を割いてはいけないのです。

例えば、本の執筆をする場合を考えてみます。

本の文章を効率よくサクサク書くことだけでは良い本はできません。その前にその本が解決したいイシューは何か、そしてそれが果たして読み手にとって、あるいは世の中にとって必要性が高いかをとことん考える。そこに時間をかけるべきなのです。曖昧なイシュー設定で、たくさんの書籍を制作したところで、イシュー度が低いからバリューが生まれないのです。

本書は、時間に拘束されるレイバラー(労働者)ではなく、結果に責任を持つプロフェッショナルとして仕事をしていこうと思っているすべてのビジネスパーソンが読んでおくべき必読書です。

2010年に読んだときに、数年に一度の傑作と断言しましたが、その考えは今もまったく変わっていません。一人でも多くの方に読んでもらい、バリューの高い仕事ができる人になってもらいたいと思います。

今月から始まる丸の内朝大学マネーコミュニケーションクラスでも課題図書にしようと考えています。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年5月9日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。