その通り「自民の憲法観」は危険だが、維新の綱領はもっと酷い

北村 隆司

日本維新の会共同代表の橋下氏は、自民党の憲法改正草案は「公権力を前面に出しすぎており、怖い」と述べたと言う。

これは、「維新は選挙屋」発言に続く正論で、橋下氏も石原氏との出会いの衝撃で受けた「脳震盪(ノーシントー)」から回復途上にあるとすれば誠に喜ばしい限りである。


橋下氏は「国家と公権力の区分けがされていない。政治家の立場で憲法を論じている。僕は一般の市民の立場に立って憲法を考えたい」と指摘された由だが、これが本心なら反対する国民は少ないだろう。

又「自民党の憲法観は危険だ。違いをしっかり出さないといけない」と強調し、夏の参院選で憲法観の違いを訴える考えを示したと言うが、私には正直、維新の憲法観がさっぱりわからない。

と言うのは、日本維新の会が最近定めた 綱領の第一項は、自民党の憲法観以上に危険だと思うからである。

その第一項には :
「日本を孤立と軽蔑の対象に貶め、絶対平和という非現実的な共同幻想を押し付けた元凶である占領憲法を大幅に改正し、国家、民族を真の自立に導き、国家を蘇生させる。」
とあるが、これは、ナチスの綱領の第一項、第二項と瓜二つだからだ。

このナチスの綱領を、ウイキペイデイアの翻訳でみると  :
1.我々は、民族の自決権を根拠として、全てのドイツ人の1つの大ドイツへの合同を要求する。
2.我々は、他国に対するドイツ民族の同権、ヴェルサイユ条約およびサン=ジェルマン条約の廃止を要求する。
とある。

多分、石原共同代表の意向でナチスの綱領を真似たのだと言う事は、常に自信満々の橋下氏が石原氏に遠慮してか「これが維新全体のコンセンサスになるかどうかわからない」と述べた事からも推察される。

私は、20011年の大阪市長選で、現職だった平松邦夫やその支援者から橋下氏が「ナチス」呼ばわりされた時、橋下氏は早稲田出身ながら福沢諭吉の最良の弟子とも言えるクラシックな民主主義信奉者だと思い弁護した。

然し、石原脳震盪(ノーシントー)の発作を起こしてからの橋下氏の言動は要注意だ。

しつこい様だが「純ドメ右翼で、海外発信力ゼロ」の石原氏とは離縁し、この際「みんなの党」や民主や自民の健全保守の人と一緒になってでも出直して欲しい。

橋下氏が動かないのであれば、本流の維新の会のメンバーは橋下氏を見限ってでも、「みんなの党」等と一緒になって初心を貫徹して欲しいとすら思う。

読売新聞社の全国世論調査では、昨年12月の衆院選で伸長した日本維新の会の勢いに陰りが出ていることが浮き彫りになり、今夏の参院比例選の投票先を聞くと、トップの自民が47%と「り勝ち」で、維新の会は民主党と同水準の8%に低迷していると言う。

この低迷の原因は間違いなく「太陽の党」との合併に、支持者が失望した結果である。

太陽の党は、年老いた「一匹狼」の集まりで、日本の将来はとても託せる訳がない。

子々孫々の為にも、日本維新の会の綱領の改定を含む、再出発をお願いしたい。

2013年5月13日
北村 隆司