経済状況で国民の政治への期待はどう変化するのか --- 岡本 裕明

アゴラ

世界を見ると国民の保守と改革の選択はその時の経済環境に比較的影響うけているように見受けられます。人々の期待とは取り巻く経済環境に左右されやすいということかもしれません。今日はそのあたりのことを考えてみたいと思います。


日本が2009年に自民党時代を終え、民主党に変わった背景で直接的な引き金になったのは2008年のリーマン・ショックだったと思います。当時は企業の業績は急激に悪化し、雇用は低迷、人々の暮らしはその先行きを見通すことすら難しかった状況でした。混沌としたそのような時には人々はどうやったら生き延びられるか、と考えがちです。社会保障や雇用の確保が最重要な問題となるのはそのような理由です。民主党がそのような流れの中で期待を背負ったのはある意味、失われた15年とも20年ともいわれる中でクライマックスを迎えたその時であったということかもしれません。

ところが、民主党の不備もありましたが、世界を見渡せばアメリカは金融緩和で着実な回復基調を辿っており、欧州はもがき苦しみながらも最悪期を抜け出しつつありました。お隣、韓国、或いは中国からは猛烈な追い上げの中、日本の存在感は薄れ、やるせない気持ちが蔓延していました。その中で再び、われわれが歩んできた道を取り戻したいという国家的な盛り上がりが自民党を後押ししたとすればつじつまは合うと思います。

この流れからすれば日本は当面自民安定の時代が来るとも見えるのです。

一方、お隣、韓国は改革派が二期続いた後、保守のハンナラ党、改名後のセヌリ党の流れとなり、李明博、朴槿恵ラインとなっています。韓国の場合、改革から保守に変わったのは2008年ですが、保守に変わってから韓国の経済成長は為替のコントロールもあり大きく伸びた時期でありました。国内では住宅バブルという恩恵があったにもかかわらず雇用などで相当の不満を溜め込んでいたことが政権交代のきっかけだったのでしょうか?

フランスの場合、保守のサルコジ大統領は改革のオランド候補に敗北し、2012年に政権交代となりました。当時、欧州は混沌とする欧州緊急危機の中、ドイツのメルケル首相とサルコジ大統領は「メルコジ」と称する蜜月の関係を作り上げ、欧州危機を欧州の両大国が推し進めるという構図を作り上げました。しかし、緊縮財政など
国内経済は軋みを見せており、ドイツのペースに乗せられ、行き絶え絶えのマラソンランナーのような状況にあったという表現がふさわしいのでしょうか? 結局、国民は政権交代を望みました。

ただし、フランスに関しては改革派のオランド大統領の支持率は急落しており、現在は20%台となっています。欧州の全体的な流れは保守が主流のように見えますので確かにオランド大統領は今後も苦戦するのでしょうか?

バンクーバーを擁するブリティッシュコロンビア州。その選挙は5月14日でありますが、最大のポイントは現与党保守と改革派の激しい戦いの行方であります。経済的バックグラウンドを考えればこの4,5年は確かに迷走し、州の付加価値税も実行後、2年でもとのプランに戻すという最悪の状況を演じました。不動産は明らかにピークアウトし、移民の雇用はなかなか決まらないという状況にファンダメンタルとしては改革派の方が有利になります。ただし、アメリカの景気回復などを考えればここで保守が与党の座を維持できなければ経済的に置いていかれることになりかねない危惧はあります。事実、保守は猛然と追い上げているというのが現状でしょうか?

景気がよくなれば国民は自立し、幸福を得やすくなり、結果として保守を選びやすいが不景気になればそれを政治に責任転嫁し政権交代を求める、というのが経済と政治という関係で見た構図でしょうか? 勿論、こんな簡単なストーリーではないのだと思いますが、政治とは結局多くの国民のおかれている状況を反映するわけですからあながち大きくはずしているわけでもないとは思いますが。

今日はこのぐらいにしておきましょうか?


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年5月13日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。