断層にカツを入れたら大騒動(その1.青春立志編) --- ヨハネス 山城

アゴラ

活断層かぁ。懐かしい言葉や。ワシが現役の地球科学者やったころ、震災後の神戸を調査しながら「カレーと断層は、上にカツがのったとたん、存在感が増すなぁ」てなことを言っていたもんや(不謹慎は出世の妨げ)。あれから、かれこれ18年、さぞや科学は進歩したやろと思って、我が青春の「活断層」をウィキペディアで(ワシも今では立派な素人)調べてみた。


まず、活断層の定義や。

「極めて近き時代まで地殻運動を繰り返した断層であり、今後もなお活動するべき可能性のある断層」を特に活断層(かつだんそう、active fault)という

天下御免の文語体、節をつけたら軍歌になりそうや。出典は「多田文夫「活断層の二種類」、『地理学評論』、日本地理学会、1927年」って、あんた、これ満州事変より古い論文やないですか。

さて、この定義。ある意味で無責任や。「今後もなお活動すべき可能性」なんぞ、当時の技術どころか、現在でも判定不能、下手したら永遠にわからん話や。だいたい「極めて近い」とか「今後」とか言われても、あとでモメる原因を仕込んでいるとしか思えへんがな。

これでは、あんまりなんで、出てきたのが例の「過去10数万年に活動したかどうか」というヤツや。この定義は放射性元素による年代測定が可能になってはじめて機能しているわけやが、かなり大きな誤差を含む。「原子物理学なんぞに頼ったイカガワシイ議論につきあえるか」と切りたい啖呵を、グっとこらえる原発村の皆の衆というわけや。

たいたい、仮に厳密な断層の活動履歴がわかったところで、今後のことが、どれだけわかるか心許ない話や。最後に動いたのが15万年前の断層が、10万年前のものよりどれだけ安全か、誰にもわからんやろ。

そやから、プロの地震屋さんたちは、普通は活断層とは言わず、単に断層という。カツばかりやと胸につかえる。でも、ここへきて、その「活」に依存した話をしだしたアホ……もとへ、業界が出てきた。電力業界や。

たとえば、原子力規制委員会の島崎センセ。地震予知連会長としてボンヤリしながら東日本大震災を迎えた、暗い過去を抱えてのリバイバルや。当然、安全第一になる。もし「こいつは十分固結してます。カツではなくてドライカレー」と太鼓判を押した断層が、次の日の地震でパックり動いた日にゃ、今度こそ、ご自分の「活」科学者認定が危うくなるがな。

なんやてぇ?「最高位幕下16枚目で廃業したお前が、現役の大横綱の批判をすな」って? ごもっともで、ごじゃりまする。そやけんど、いくら弱かった力士でも八百長の話やったら、耳を傾けてもろても、ええと思うんやがのう(その2.激動陰謀編、に続く)。

ヨハネス 山城
通りがかりのサイエンティスト