『空気の構造』(池田信夫 価格:¥1400税込)が発売されました。
「空気」をどう読むか―。さまざまな次元の絆/共同性のなかで、われわれ「日本人」は、絶えずこの問題にぶち当たる。会社組織や組合活動は言うまでもない。帝国陸軍のインパール作戦から東電福島第一原発の事故対応に至るまで、いったんこの「空気」の構造が発動すると、そこに待っているのは「思考停止」と組織の崩壊である。 本書は、著名なブロガーで、ブログ論壇「アゴラ」を主宰して財界人や起業家、ビジネスマンに絶大な影響力を誇る池田信夫氏の渾身の書き下ろしである。経済学をベースに生物学や人類学、民俗学の最新の知見を援用しながら、従来の日本論に「空気」という視角でメスを入れてゆく。 日本論というと、徳川の泰平意識と「国学」、バブル経済と「日本的経営」というように、ブームは日本が調子のいい時代に訪れている。本書はこうしたものにとどまらず、丸山眞男、梅棹忠夫、山本七平、『失敗の本質』共同研究、網野善彦、與那覇潤ら、戦後の言説を振り返りながら、低成長下日本の現在を踏まえて展開してゆくのが最大の特長となる。 そもそも「空気」とは何か? また「空気」はいつ、いかなる形で醸成されるのか? そして、そこから脱出することは果たして可能なのか? 閉塞した今を乗り越えるための一冊!
【目次】
はじめに——日本人は特殊か 9
序章 「空気」が原発を止めた 13
首相からの突然の「お願い」/玄海原発の失敗/「空気」が法律より重い国
第一章 日本人論の系譜 23
罪の文化と恥の文化/講座派と労農派/敗戦と悔恨共同体/文明の生態史観
唯物史観と「水利社会」/タテ社会とヨコ社会/人と人の間/安心社会と信頼社会
「水社会」の同調圧力/灌漑農業のボトムアップ構造
日本人の肖像——福沢諭吉 51
第二章 「空気」の支配 55
「日本教」の特殊性/自転する組織/日本軍を動かした「空気」/公害反対運動と臨在感
アニミズムから一神教へ/一揆と下克上/動機の純粋性
日本人の肖像——北一輝 77
第三章 日本人の「古層」 81
超国家主義の構造/無責任の体系/国体という空気/フィクションとしての制度
つぎつぎになりゆくいきほひ/永遠の今と「世間」/キヨキココロの倫理
「まつりごと」の構造/天皇制というデモクラシー/全員一致とアンチコモンズ
ボトムアップの意思決定/「古層」とポストモダン/近代化なき成長の終わり
日本人の肖像——南方熊楠 114
第四章 武士のエートス 117
日本のコモンロー/徳川の平和/自然から作為へ/尊王攘夷の起源/開国のインパクト
惑溺と自尊
日本人の肖像——岸信介 138
第五章 日本軍の「失敗の本質」 141
目的なき組織/曖昧な戦略/短期決戦と補給の軽視/縦割りで属人的な組織
心情が戦略に先立つ/心やさしき独裁者/両論併記と非決定/大日本帝国の密教と顕教
日本人の肖像——石原莞爾 159
第六章 日本的経営の神話 161
外国人の見た日本企業/日本的経営の黄金時代/勤勉革命の伝統/日本的労使関係の起源
日本企業は町工場の集合体/協力と長期的関係/共有知識としての「空気」/村から会社へ
日本的雇用がデフレを生んだ/年功序列の終焉/グローバル資本主義の試練
日本人の肖像——中内功 187
第七章 平和のテクノロジー 191
殺し合う人間/集団淘汰と平等主義/偏狭な利他主義/戦争が国家を生んだ
「無縁」とノマド/飛礫の暴力性/古層と最古層/なぜ「古層」は変わらないのか
日本人の肖像——昭和天皇 212
第八章 日本型デモクラシーの終わり 217
空虚な中心/多頭一身の怪物/霞が関のスパゲティ/「政治主導」の幻想
日本型経営者資本主義の挫折/約束を破るメカニズム/セーフティ・ネットが檻になるとき
閉じた社会から開かれた社会へ
注 235
人名索引 1