アベノミクスに対する私見 ~先送りこそ今の時代が求める政策~ --- うさみ のりや

アゴラ

今日は個人的なアベノミクス観をつらつら述べます。

まずあくまで私見ですが、「日本が社会保障負担を支えきれず財政的に行き詰まる」というのは避けられない長期的な趨勢だと思っています。厚生年金の積立金が単調減少を続け、なんども想定を書き換えていることはシンボリックな話です。ただそれは日本が民主主義社会で、有権者人口ベースでは50代以上の人口が6割を占め、彼らが社会保険制度を前提として人生設計をしてきた以上は政治的にしかたがないと思っています。


非常に不公平ですが、選挙で政治が決まるとはこういうことなんだろうと思っています。ただ一方で、我々はまさに親に育てていただき、親の世代が作ってくれた今の社会の恩恵を受けているのですから、甘んじて子の世代としてそれを受け入れるべきという思いもあります。彼らが、今の政府に望むことは「さも永続するかのように見せて」なるべく年金制度の破綻を先延ばしにしていくことです。政治としては残念ながらそれに応えることが求められます。つまり、少なくとも団塊の世代の大半が人生を終えるあと20年程度は年金制度の破綻を先延ばす、これこそが今の政治に求められることだと思っています。

そこで本論に戻るわけですが、私はアベノミクスの本質は「日銀が国債を大量に買い入れて金融緩和を進め、銀行のポジションを強制的に押し出し、国債以外のところにお金が回るような環境を整える。その投資でイノベーションを誘発して経済成長を促していく。」ということと考えています。則ち、問題は「イノベーション」という不安定なキーワードで先送りされているわけです。これはまさに今の政治に求められていることです。概して言えば、アベノミクスとは「適切な先送り政策である」というように捉えています。これは批判している訳ではなく褒めているつもりです。賃金上昇や物価上昇が安部政権の期待するように推移することはおそらくないでしょうが、少なくとも年金制度の瓦解はこれで幾分か先送りされたはずです。

ちなみに私はリフレ派の良く言う「期待」とは問題先送りのマジックワードと思っています。そういう意味じゃ、とても適切な言葉です。50代以上の「年金を満額受け取りたい」という「期待」があるためにアベノミクスが必要なのですから。ということで30代以下のみなさん、日本の将来に的確に絶望して、来るべき次世代社会の構築にむけて虎視眈々と能力を磨き、人脈を作りましょう。我々の本番は20年後です。

ではでは今日はこんなところで。


編集部より:このブログは「うさみのりやのブログ」2013年5月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はうさみのりやのブログをご覧ください。