毎週読んでいる日経ビジネス最新号(2013.6.3.号)の特集「流通新勢力」には、今まで聞いたことのない活きの良い会社が紹介されています。その中で気になったのが、函館にある「ラッピ」ことラッキーピエロというハンバーガーチェーンです。
チェーンといっても函館とその周辺にわずか16店舗。地方にある中途半端なハンバーガーチェーンかと思いきや、函館ではラッピが12店舗でマックは4店舗と、完全にラッピが押さえているというのです。
この成功の裏には、「脱画一化」と「えこひいき」があると分析しています。
「脱画一化」というのは、店舗のデザインです。美味しいだけではお客さんに来てもらえないから、大きなキリンのオブジェを店内に飾ったり、お客さんに驚きを提供するというのが目的です。写真はありませんでしたが、ボッティチェリの絵画が壁面を埋めている店舗や、サンタクロースで溢れかえる店舗など、個性ある店舗が展開されているようです。
ファストフードというより、テーマパークと言った方が良いと思える戦略です。
そしてもう1つの「えこひいき」とは地元のヘビーユーザーを大切にする戦略です。会員サービス「ラッキーピエロサーカス」に入ると、準団員→正団員→スター団員→スーパースター団員、というように階級が上がっていきます。ランクに応じて還元率が高まるのですが、それ以外の非金銭的サービスがあります。
スーパースター団員が買い物をすると「スーパースター団員の●●さま、ありがとうございます!」と声をかけられ、店長が挨拶にくる。さらに、会社の新年会や新店舗のオープン招待など、常連に対する手厚いサービスを提供しているのです。
このようなやり方は、画一的なサービスを提供して効率化し、価格競争力や商品開発力を高める戦略とは真逆に見えます。しかし、顧客が外食に求めるものが何かを考えると実は理にかなった戦略と言えます。
外食の目的は、自分で作る手間を省いたり時間が無いから早く食べたいという動機と、家族や友達とゆっくりとした時間を楽しく過ごしたいという動機の2極に分かれます。
前者であれば、安くてすぐに出てくるものが良いのでしょうが、こちらは大手のハンバーガーチェーンや牛丼チェーンが押さえています。一方で後者のエンターテインメントとしての外食は、味を追求している高級なフレンチやイタリアンはありますが、家族で楽しめるような業態はあまりありません。そこにビジネスチャンスがあるのです。
ディズニーランドは究極のテーマパークですが、客単価は1万円ですから簡単には行くことはできません。ラッキーピエロは、ハンバーガーチェーンですが、経営者としては、入場料無料のテーマパークでハンバーガーも提供しているという感覚なのではないでしょうか。
今度函館に行ったら、寄ってみたいと思いました。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年6月1日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。