立ち直りの早いアメリカに学ぶべきこと --- 岡本 裕明

アゴラ

アメリカの金融緩和に出口が近いのではないかという見方が増えてきました。これは好調な経済指標が並び、今後も順調な回復が望めるという期待が高まったためであります。

6月7日に発表される雇用統計は現時点での見込みが17.5万人の純増で失業率は変わらずの7.5%程度と予想されています。失業率はともかく、仮に雇用がネットで15万人以上の回復があればアメリカの経済の回復ぶりはしっかりした足取りだとみてよいのではないでしょうか?


FRBの判断はこの雇用統計を重視する可能性もあり、予想通り、雇用の回復に好調さを見出せるのであれば金融緩和出口論は更に強まることになろうかと思います。市場は実にわがままなもので昨年辺りまでは雇用回復が順調でないと株式市場は大幅に売られてきたのですが、今回はあまりに順調となれば金融緩和終焉を意味することになり、株式市場への資金流入が細る、との見方から株は売られる公算はあるのではないでしょうか?

自動車の販売は絶好調でフォードなどはフル生産体制に入っていますし、住宅の回復振りも明確になっています。シェールガス革命でエネルギーの自前調達が進み始め、貿易赤字の解消は更に進むでしょう。当面の財政赤字の半減化目標も民主、共和でもめてはいるものの着実にその方向に近づいています。

となれば強いアメリカが再び戻ってくる可能性は否定できず、結果として米ドルは基軸通貨としての信任を再び得ることが出来るかと思います。そうなれば相場として動く方向性としては

金の下落
円やユーロなどが対ドルで下落
株は一時的に下落

ということかと思います。

株の一時的下落というのはアメリカ経済が強まるのですから本当の意味で株価が回復するはずなのですが、今までは金融緩和という技巧的手法により高株価を作り上げていましたから一旦仕切りなおすのではないでしょうか?

さて、アメリカがリーマン・ショックから5年で立ち直るとすれば日本がバブル崩壊から20年もぐずったことと比較、研究する価値はおおいにあるかと思います。現時点で私の思うところはアメリカは企業と個人の負債、不良債権を一気に膿だししながらも立ち直りの道を与えたことではないかと思います。

よく言われるのは日本では一度倒産するとその会社を運営していた経営者は烙印が押されるといわれますが、アメリカでは「失敗は成功のもと」を地で行っているようなものでその立ち直りに賞賛の声すらあがります。リーマン・ショックで家を抵当で取られた人も会社を倒産させた人もやり直しがきく社会がその回復力の源泉だったとしたら日本は大いに見直さねばなりません。

また、最近は減ってきているはずですが、わゆる隠蔽癖や問題の先送り症が日本独自の問題点だと思います。オリンパス問題はまさにその典型だったわけでイギリス人社長だったからこそパンドラの箱が開けられたともいえるのです。日本人の社長だけならば臭いはずっとしていても見ない、聞かないふりをし続けたのかもしれませんね。

そういう風に考えればアメリカの景気回復が本物かどうか、という議論に関して回復はゆっくりではあるものの日本よりは確実に早いりカバーが期待できるのかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年6月2日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。