ダボス会議の「ジャパン・ミーティング」で、安倍首相が日本の課題についてスピーチした。驚いたのは「日本の直面する2つの課題」として「政府債務と人口の高齢化」をあげたことだ。え?「デフレ脱却なしに日本経済の復活はない」という所信表明はどうなったの? コアCPIはまだ-0.4%のデフレだし、長期金利は上がって株価は暴落したんですけど。
しかし安倍氏がリフレに見切りをつけたのだとすれば、結構なことだ。浜田宏一参与も「景気が回復すればインフレは必要ない」といい、今後は弱者救済の「第4の矢」が必要だという。「壮大な実験と言えるアベノミクスが失敗に終わったら、どうしますか」という記者の質問には
学者としての責任の取り方、それは公の場で自分の考えの誤りを認めることです。ただし、私たちが責任を問われるなら、今までリフレ政策に反対していた学者や経済評論家、デフレを放置した日銀幹部も総ざんげすべきです。
彼の推奨したインフレ目標やバランスシートの拡大が失敗したことを事実上認め、公の場で誤りを認める覚悟を述べたのは立派だが、岩本康志氏もいうように
「大胆な金融緩和」によって,大した費用も副作用もなしでデフレが脱却でき,なおかつ経済が好転すれば,誰もが大歓迎だ。そういう妙薬があったらいい,という願望は日本のデフレを考える経済学者は皆もっているが,実際にそういう妙薬が存在するかどうかは別の問題である。妙薬がなければ,妙薬があると言っていた人間だけが間違っている。
いまだに誤りを認めないで統計を改竄して見苦しい言い訳をしている人物もいるが、上杉隆のように恥の上塗りになるだけだ。上杉が私に対して起こした訴訟は、代理人が降りて延期されたが、私の反訴は生きているのでブーメランになってしまった。おまけにTogetterで削除騒動を起こし、最大の収入源だったメルマガも止められてしまった。
リフレとか反原発のような「俗耳に入りやすい」話がマスコミでもてはやされるのはよくあることで、これに便乗してもうけようとする連中も珍しくないが、こういう「言論バブル」の寿命は短い。安倍氏がリフレから「転進」し、財政再建や高齢化などの本質的な問題に取り組むのだとすれば「私は消えない」という彼の覚悟を信じよう。今は何も具体策はないが。
追記:ツイッターで教えてもらったが、このビデオは1月のダボス会議の「ジャパン・ナイト」のものらしい。ただ今日のスピーチにも金融政策への言及はない。