阿呆は誰か

小幡 績

阿呆は誰か

私は、現在の金融政策には強い反対しているし、ずっと批判もしている。しかし、いわゆるアベノミクス、あるいは三本の矢と安倍首相が言っている、彼らの経済政策については、第一の矢である大胆な金融政策以外は、批判する気はない。アベノミクスをアホノミクスと呼んで、現在の政策を批判している人々もいるが、私は、彼らとは全く意見が違う。

本当に阿呆なのは誰か。


そもそも、アホノミクスなどという言葉を使うこと自体が、もっとも阿呆な行為であるが、それを持てはやすメディアは、さらに阿呆だ。しかし、もっと阿呆な人々がいた。海外投資家たちである。彼らは、真底阿呆だ。

安倍首相が、第三の矢の第三弾を発表した。いわゆる成長戦略、規制改革である。そして、これが、あまりに中身のないものだということで、株式市場は失望して、大きく株価が下げた(ことになっている)。

さらに、昨日は、日銀の政策決定会合があり、黒田総裁が記者会見をした。株価が5月23日から激しく暴落していることに対応して、何らかの対応策を出してくると期待していた海外投資家たちは、何も出てこなかったことに大きく失望した。

阿呆だ。

私だけでなく、1億2千万人の日本国民は良く知っている。

安倍政権、自民党政権に、規制改革が出来るわけがないことを。誰もそんなことを期待していない。何も期待できないが、前よりは世の中が明るくなることを期待し、実際、それは人々のムードにより、自己実現したのだ。株価と世間の雰囲気は自己実現する。そのきっかけを安倍氏は作ってくれた。だから、僕らは、安倍さんを支持しているのだ。政策の中身など、誰も期待していない。

黒田日銀総裁の政策も同じだ。4月4日に、もうこれ以上できない、と言っていたじゃないか。何を聞いていたのか。英語には訳されなかったとでもいうのか。新聞社と通信社が誤訳したというのか。これ以上、あるはずがない。

それにもかかわらず、為替市場、株式市場は失望して、大きく下落したらしい。

さらに、黒田政策の矛盾を指摘する声が出てきた。本当に、彼の言っている政策は実現できるのか。日銀の緩和政策には矛盾があると。

だから、言ってるじゃないか。最初から。4月4日に黒田氏が言ったことは、できないことをやると言っているだけだし、無理やりやったらよくないことばかりだと。

今頃、矛盾に気づくとは。

リフレ派の人々だって、良く知っている。俺らの政策はまともじゃないと。まともじゃない政策だから、これまでまともな日銀総裁はやってこなかった。あの、もっとも日本経済と金融政策を間違って理解しているクルッグマンでさえ、言っていた。まともではないからこそ、まともでない金融緩和の過度の延長、継続ができると。

だから、まともじゃない政策すら決意を持ってやると、人々に信じ込ませることが重要だと。それがリフレ派の考えだから、矛盾した政策に決まっている。

もちろん、海外投資家にも、本当の阿呆と、阿呆のふりをしているものといる。本当に失望したやつは、半分。失望したふりをして、さらにカネをひきだそうとしているやつらが半分。そして、金融市場で影響力のある人々とは後者なのだ。

それに気づいていない、国内投資家とメディアがいるとすれば、それが一番の阿呆だ。